「エターナル」書評
- 2015/08/01
- 00:11
先日ご紹介しました如月恭介氏の新作「エターナル」ですが、あっという間に読み終わってしまったので書評を書きたいと思います。
本作は「エンジェル」の三百年後にあたる作品で(ちなみに「エンジェル」を読んでなくても楽しめます)、死の奇病から身を守った人類は、その科学技術を進化させ、ついに寿命という概念を持たない肉体を手に入れていました。
しかし、人間は7000年に一度地球へと近付いて来るという惑星ニビルの脅威に怯えています。というのも、惑星ニビルにはアヌンナキと呼ばれる一族がいて、それは人間を創造した神と呼ばれる生命体だからです。
知らぬ間に紅林源内という独裁者が統治するようになっていた地球の政府は、なんと来たるべき神々と闘う事を決めていたのです。
この闘いの結末はいかに?
そして戦争の先に生き残っているのは神か、それとも人間か?
――と、かなりざっくりですが、作品を紹介するとそんな感じです。
いやあ、しかし、随分とスケールのでかい話になったなと思います。
先に申し上げておくと、本作は前もって氏の「優しい悪魔」を読んでおくとなお楽しめると思います。あちらでもアヌンナキという神が描かれていますからね(設定はそのまま引き継いでいるわけではないようです)。
作品について色々と触れたいところがあるのですが、それをやると記事が長くなりすぎるので特に印象に残った事を書いていきます。
本作はともかく人間VS神の戦争なのですが、そのシンプルな題材の中には本当に色んなテーマが盛り込まれています。
たとえば進化した人間は「ヒト」という生命体を創り上げていて、その種族を戦争の駒に使おうとしています。自らの手は汚さずに神々と闘おうという算段ですね。
でもこれは7000年前に神がやろうとした事とまさに同じであり、注意深く読んでいれば鏡と鏡を突き合わせたような感覚になるでしょう。氏のスゴイところは、単純に神に闘いを挑むとか陳腐な考えに走らず、神の通った道をあえて人間に辿らせる事によって、読者に深く考える機会を与えているという点なんですね。
たとえば桃太郎なんて勧善懲悪の話ですが、何もしていないにも関わらず襲撃された鬼からしたらたまったもんじゃないでしょう? 作品は違えど、氏は悪い奴倒したぜイエーイ! という考えに読者が陥らないよう誘導しているんです。
また、本作では神と人間の双方に独裁者がいます。神を統治するアヌ。そして人間を統治する紅林源内。まあ、どっちも見事なクズです(笑)。
普通こういう話を書くと、とにかくドンパチをどれだけ派手に書くかというところに作者の注意は行きがちですが、今作では人間の達也(もしかしてネーミング元は忌川さん?)と神の側にいるエンキが戦争を止めようと奮起します。その様がまさに人間ドラマに満ち溢れた作品になっているのですが、やはり如月氏は心の優しい人なんだな、という印象をこの作品から受けました。
ネタバレ防止のためあんまり詳しくは書けませんが、普通だったら決着をハッキリつける方向で話を書くと思うんですよね。でも、混沌の中にあっても和平を実現するために命を賭ける人間達を描ききっているわけです。こういう発想はなかなか出来ない。
鮫島というクセのあるキャラも良く、色々と正義について内省させられる作品でした。だからこそ一気に読んでしまったのかもしれません。
現状のKDP作品ではナンバーワンのスケール感じゃないですか?
ここまででっかい話を書いて、それを長編でちゃんと描ききっている作品はまだ他に知りませんねえ。
「エンジェル」の続編というだけあって、正直(力みすぎで)やらかす可能性も覚悟はしていたのですが杞憂でした。
文句なしの傑作です!
本作は「エンジェル」の三百年後にあたる作品で(ちなみに「エンジェル」を読んでなくても楽しめます)、死の奇病から身を守った人類は、その科学技術を進化させ、ついに寿命という概念を持たない肉体を手に入れていました。
しかし、人間は7000年に一度地球へと近付いて来るという惑星ニビルの脅威に怯えています。というのも、惑星ニビルにはアヌンナキと呼ばれる一族がいて、それは人間を創造した神と呼ばれる生命体だからです。
知らぬ間に紅林源内という独裁者が統治するようになっていた地球の政府は、なんと来たるべき神々と闘う事を決めていたのです。
この闘いの結末はいかに?
そして戦争の先に生き残っているのは神か、それとも人間か?
――と、かなりざっくりですが、作品を紹介するとそんな感じです。
いやあ、しかし、随分とスケールのでかい話になったなと思います。
先に申し上げておくと、本作は前もって氏の「優しい悪魔」を読んでおくとなお楽しめると思います。あちらでもアヌンナキという神が描かれていますからね(設定はそのまま引き継いでいるわけではないようです)。
作品について色々と触れたいところがあるのですが、それをやると記事が長くなりすぎるので特に印象に残った事を書いていきます。
本作はともかく人間VS神の戦争なのですが、そのシンプルな題材の中には本当に色んなテーマが盛り込まれています。
たとえば進化した人間は「ヒト」という生命体を創り上げていて、その種族を戦争の駒に使おうとしています。自らの手は汚さずに神々と闘おうという算段ですね。
でもこれは7000年前に神がやろうとした事とまさに同じであり、注意深く読んでいれば鏡と鏡を突き合わせたような感覚になるでしょう。氏のスゴイところは、単純に神に闘いを挑むとか陳腐な考えに走らず、神の通った道をあえて人間に辿らせる事によって、読者に深く考える機会を与えているという点なんですね。
たとえば桃太郎なんて勧善懲悪の話ですが、何もしていないにも関わらず襲撃された鬼からしたらたまったもんじゃないでしょう? 作品は違えど、氏は悪い奴倒したぜイエーイ! という考えに読者が陥らないよう誘導しているんです。
また、本作では神と人間の双方に独裁者がいます。神を統治するアヌ。そして人間を統治する紅林源内。まあ、どっちも見事なクズです(笑)。
普通こういう話を書くと、とにかくドンパチをどれだけ派手に書くかというところに作者の注意は行きがちですが、今作では人間の達也(もしかしてネーミング元は忌川さん?)と神の側にいるエンキが戦争を止めようと奮起します。その様がまさに人間ドラマに満ち溢れた作品になっているのですが、やはり如月氏は心の優しい人なんだな、という印象をこの作品から受けました。
ネタバレ防止のためあんまり詳しくは書けませんが、普通だったら決着をハッキリつける方向で話を書くと思うんですよね。でも、混沌の中にあっても和平を実現するために命を賭ける人間達を描ききっているわけです。こういう発想はなかなか出来ない。
鮫島というクセのあるキャラも良く、色々と正義について内省させられる作品でした。だからこそ一気に読んでしまったのかもしれません。
現状のKDP作品ではナンバーワンのスケール感じゃないですか?
ここまででっかい話を書いて、それを長編でちゃんと描ききっている作品はまだ他に知りませんねえ。
「エンジェル」の続編というだけあって、正直(力みすぎで)やらかす可能性も覚悟はしていたのですが杞憂でした。
文句なしの傑作です!
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