稲垣收「金網ガール: Cage Girl」書評
- 2023/08/08
- 21:02
今回はセルパブ(?)で読んだ作品の書評です。
本日読了したのは稲垣收(敬称略)の「金網ガール: Cage Girl」です。
え? 稲垣收ってあのUFCの解説をやってた人ですか?っていうのがとっかかりでした。
今さらはじめたツイッターで格闘技系の話題を漁っていたら、本著の宣伝アカウント(?)にフォローいただいたので、「面白そう!」としれっと購入して読んだんですね。
全然リリースの情報を知らなかったのですが、2021年10月19日に上梓された作品のようです。
ストーリーを簡単に説明します。
本著の序盤では、本作のワトソン君的な立場にいる30手前のサラリーマン、東がコンビニ付近でオヤジ狩りに遭います。
生命的にわりと本当にヤバい状況になるのですが、そこを通りかかった女子総合格闘家のミサキが鬼のような強さで男達をボコボコにして助けてくれます。
名乗りもせずに去って行った女性が気になった東は、割と理知的にネットを駆使してミサキのいるジムを割り出して、お礼を言いに行きます。
そこで総合格闘技と出会った東は、ひょんな事から自身でも格闘技をやる事に……。
空手をバックボーンに持つミサキは鬼神のような強さを見せて、QFC(言うまでも無く商標の問題でUFCの呼び名を変えたもの)の王者であるジュリアと闘う事になります。
果たして最強はどちらなのか。そして、ミサキの背負った悲しい過去とは……?
といったお話です。
本作、2023年8月8日現在で100円で売られているのですが、ボリューム的には分厚い文庫本ほどあります。(Kindle換算で5969ページ)
ですが、まったく長さは感じさせず、一気に読ませます。私自身がボクサーだった事もあり、格闘技モノについてはかなりシビアな目を持っていますが、本作はまぎれもない傑作です。
本編とはちょっと逸れますが、アマゾンに記載の著者のプロフィールを抜粋します。
稲垣 收(いながき しゅう)
慶応義塾大学フランス文学科卒。出版社勤務後、フリーランスとなり東西ドイツ統一、モスクワ・クーデター、ソ連崩壊、ジョージア内戦、モルドバ内戦、ユーゴ内戦、パレスチナ紛争などを取材。
(中略)
格闘技取材歴も30年超。WOWOWの『UFCー究極格闘技』で、10年以上にわたり解説者を務めた。
世界最大の総合格闘技大会UFCを1993年の第1回から取材した他、ボクシング、K-1、PRIDE、RIZIN、極真空手などさまざまな格闘技大会を数千試合取材し、専門誌や週刊プレイボーイなどに試合レポートやインタビューを執筆。
(中略)
本人もボクシング、キック、総合格闘技、空手などの経験あり。
(抜粋はここまで)
上記を見ると分かるでしょうが、もう経歴がバケモノです。
読んでいて思いましたが、この作品のバトルシーンは、ガチで格闘技をやっていた人にしか絶対に踏み込めない領域が書かれていました。見た事はないですけど、著者も格闘技で実力者なのでは? と思いました。。それだけのリアルさがありました。
女子格闘技界で有名な藤井惠がこの小説の動きをマネしてみようと思ったらしいですが、たしかにそれだけの説得力がある格闘描写でした。
試合の描写に限らず、ユーゴ内戦等の取材から得た経験が活きているようです。
作中に出てくる外国人選手のリアルな背景というか、人生がとてもよく出来ていました。ああ、確かにそういう戦争犯罪ってありますよねと、妙に納得してしまったのを覚えています。
かといって小難しい方面に走る事なく、序盤でワトソン君と評した東君の扱いが絶妙で、初心者の視点を入れ込む事で読者を置いてきぼりにしない親切設計で作られています。
この東君も男を見せるところがあり、胸が熱くなりました。
本作はグダグダ言うよりとにかく読んでみてくれという感じです。100円で激安な上に提供するものは極上という素晴らしいセルパブ作品(セルパブだよね?)でした。
また、これを読んで楽しんでもらえたら、私の書いたボクシング小説の「PCM」もぜひ手に取って下さいね。(←堂々と便乗)
本作は馳星周の「漂流街」があまりにも面白くカッコ良かったので「これはパクろう」と文体をパクって自分なりに書いたボクシング小説です。
やっぱり格闘技小説でもちゃんと出来ているものは本当に面白いですね。いいものを見つけました。心が折れそうなこんな世の中だからこそ、ぜひ読んでみて下さいね。
本日読了したのは稲垣收(敬称略)の「金網ガール: Cage Girl」です。
え? 稲垣收ってあのUFCの解説をやってた人ですか?っていうのがとっかかりでした。
今さらはじめたツイッターで格闘技系の話題を漁っていたら、本著の宣伝アカウント(?)にフォローいただいたので、「面白そう!」としれっと購入して読んだんですね。
全然リリースの情報を知らなかったのですが、2021年10月19日に上梓された作品のようです。
ストーリーを簡単に説明します。
本著の序盤では、本作のワトソン君的な立場にいる30手前のサラリーマン、東がコンビニ付近でオヤジ狩りに遭います。
生命的にわりと本当にヤバい状況になるのですが、そこを通りかかった女子総合格闘家のミサキが鬼のような強さで男達をボコボコにして助けてくれます。
名乗りもせずに去って行った女性が気になった東は、割と理知的にネットを駆使してミサキのいるジムを割り出して、お礼を言いに行きます。
そこで総合格闘技と出会った東は、ひょんな事から自身でも格闘技をやる事に……。
空手をバックボーンに持つミサキは鬼神のような強さを見せて、QFC(言うまでも無く商標の問題でUFCの呼び名を変えたもの)の王者であるジュリアと闘う事になります。
果たして最強はどちらなのか。そして、ミサキの背負った悲しい過去とは……?
といったお話です。
本作、2023年8月8日現在で100円で売られているのですが、ボリューム的には分厚い文庫本ほどあります。(Kindle換算で5969ページ)
ですが、まったく長さは感じさせず、一気に読ませます。私自身がボクサーだった事もあり、格闘技モノについてはかなりシビアな目を持っていますが、本作はまぎれもない傑作です。
本編とはちょっと逸れますが、アマゾンに記載の著者のプロフィールを抜粋します。
稲垣 收(いながき しゅう)
慶応義塾大学フランス文学科卒。出版社勤務後、フリーランスとなり東西ドイツ統一、モスクワ・クーデター、ソ連崩壊、ジョージア内戦、モルドバ内戦、ユーゴ内戦、パレスチナ紛争などを取材。
(中略)
格闘技取材歴も30年超。WOWOWの『UFCー究極格闘技』で、10年以上にわたり解説者を務めた。
世界最大の総合格闘技大会UFCを1993年の第1回から取材した他、ボクシング、K-1、PRIDE、RIZIN、極真空手などさまざまな格闘技大会を数千試合取材し、専門誌や週刊プレイボーイなどに試合レポートやインタビューを執筆。
(中略)
本人もボクシング、キック、総合格闘技、空手などの経験あり。
(抜粋はここまで)
上記を見ると分かるでしょうが、もう経歴がバケモノです。
読んでいて思いましたが、この作品のバトルシーンは、ガチで格闘技をやっていた人にしか絶対に踏み込めない領域が書かれていました。見た事はないですけど、著者も格闘技で実力者なのでは? と思いました。。それだけのリアルさがありました。
女子格闘技界で有名な藤井惠がこの小説の動きをマネしてみようと思ったらしいですが、たしかにそれだけの説得力がある格闘描写でした。
試合の描写に限らず、ユーゴ内戦等の取材から得た経験が活きているようです。
作中に出てくる外国人選手のリアルな背景というか、人生がとてもよく出来ていました。ああ、確かにそういう戦争犯罪ってありますよねと、妙に納得してしまったのを覚えています。
かといって小難しい方面に走る事なく、序盤でワトソン君と評した東君の扱いが絶妙で、初心者の視点を入れ込む事で読者を置いてきぼりにしない親切設計で作られています。
この東君も男を見せるところがあり、胸が熱くなりました。
本作はグダグダ言うよりとにかく読んでみてくれという感じです。100円で激安な上に提供するものは極上という素晴らしいセルパブ作品(セルパブだよね?)でした。
また、これを読んで楽しんでもらえたら、私の書いたボクシング小説の「PCM」もぜひ手に取って下さいね。(←堂々と便乗)
本作は馳星周の「漂流街」があまりにも面白くカッコ良かったので「これはパクろう」と文体をパクって自分なりに書いたボクシング小説です。
やっぱり格闘技小説でもちゃんと出来ているものは本当に面白いですね。いいものを見つけました。心が折れそうなこんな世の中だからこそ、ぜひ読んでみて下さいね。
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