深町秋生「探偵は田園をゆく シングルマザー探偵の事件日誌」書評
- 2023/02/26
- 23:08
深町秋生の「探偵は田園をゆく シングルマザー探偵の事件日誌」を読了しました。
今回も骨太なエンタメ作品でございました。
本作の流れをざっくりと説明します。
主人公である椎名留美(しいな るみ)は元警官のシングルマザーで、探偵稼業で糊口を立てています。
ただ、探偵業だけでは食っていけないので、デリヘルのドライバーといったあまり人に言いたくないバイトで日銭を稼いでいます。
そんなある日、デリ嬢のキラリちゃん(明日香キララ?)を「配達」していたところ、ラブホテルで大暴れしている男に遭遇します。
持ち前の格闘術で男を叩きのめしたはいいのですが、その事件を機にデリヘルのドライバーはクビになってしまいます。
これからどうしようと思っていたところ、暴漢を撃退した縁でラブテルのオーナーである橋立和喜子から行方不明となった息子の翼を探してほしいとの依頼を受けます。
翼の周囲から聞き込みをしていく過程で、そのろくでもない人格があらわになっていきます。ろくでもない事件に巻き込まれる人には、大抵そのような理由がいくらかあるという事です。
そんな中、調査の過程でシングルマザーである美人市議の名前が浮上します。一見さわやかなシンママ政治家にも、色々ときな臭いところがあり……。
調査を進めていくごとに、翼の失踪と美人市議の過去や謀略が、点と線で結ばれて行きます。
美人市議の背後にうごめく陰謀とは? そして、翼を「消した」真犯人とは?
……といったお話です。
個人的に深町秋生の作品は格闘ゲームさながらのアクションが魅力かと思っていますが、今回はミステリ色が強くなったように見えました。
かといって退屈な作品になるわけではなく、それほど驚異的なオチがあるわけでは無いにも関わらず、最後には爽快なカタルシスがありました。
本作では山形弁を駆使するキャラがあちこちに出ており、地方を活かした小説としては比較的珍しいのではないかと思います。
深町秋生の作品をおそらく全部読んでいる私としてはオチがなんとなく読めたところもありましたが、いかにシンママの政治家をジャンヌ・ダルク的に売り出していくかの具体的な過程や、どのように反社の方々がそういった世界へと入り込んで来るのかといった過程が非常にリアルに描かれており、良い意味で「いつもの深町秋生」の要素を携えた本作を夢中になって読みました。
また、深町秋生のファンであればいくらかストーリーの筋は見えたかとは思いますが、本作のストーリー全体の構成はかなり練ったと思われ、狭い世界でも無限に物語を作れる(=シリーズとして何作も続けられる)要素を証明したと思うので、人気が出ればこの形でしばらくシリーズが続いていくのではないかと思いました。
やっぱり魑魅魍魎溢れる政治で、ただいたいけな女性が担がれるわけが無いのです。
神輿に乗せられる人や乗せる人も、それなりの資質や野心で権謀術数に走るのだと思うと、その生々しさへ妙に納得してしまうところがありました。こういった攻防や上位カーストへと行く過程は、高校生でも政治家でも変わらないのかなとも思いました。
読みやすい上に一度読み始めたら止まらないので、おそらく一気読みしてしまうかと思います。
期待を裏切らない新作ですので、ぜひ手に取ってみて下さい。
こっちもよろしく!
以下の3作品が本日より5日間無料です。
今回も骨太なエンタメ作品でございました。
本作の流れをざっくりと説明します。
主人公である椎名留美(しいな るみ)は元警官のシングルマザーで、探偵稼業で糊口を立てています。
ただ、探偵業だけでは食っていけないので、デリヘルのドライバーといったあまり人に言いたくないバイトで日銭を稼いでいます。
そんなある日、デリ嬢のキラリちゃん(明日香キララ?)を「配達」していたところ、ラブホテルで大暴れしている男に遭遇します。
持ち前の格闘術で男を叩きのめしたはいいのですが、その事件を機にデリヘルのドライバーはクビになってしまいます。
これからどうしようと思っていたところ、暴漢を撃退した縁でラブテルのオーナーである橋立和喜子から行方不明となった息子の翼を探してほしいとの依頼を受けます。
翼の周囲から聞き込みをしていく過程で、そのろくでもない人格があらわになっていきます。ろくでもない事件に巻き込まれる人には、大抵そのような理由がいくらかあるという事です。
そんな中、調査の過程でシングルマザーである美人市議の名前が浮上します。一見さわやかなシンママ政治家にも、色々ときな臭いところがあり……。
調査を進めていくごとに、翼の失踪と美人市議の過去や謀略が、点と線で結ばれて行きます。
美人市議の背後にうごめく陰謀とは? そして、翼を「消した」真犯人とは?
……といったお話です。
個人的に深町秋生の作品は格闘ゲームさながらのアクションが魅力かと思っていますが、今回はミステリ色が強くなったように見えました。
かといって退屈な作品になるわけではなく、それほど驚異的なオチがあるわけでは無いにも関わらず、最後には爽快なカタルシスがありました。
本作では山形弁を駆使するキャラがあちこちに出ており、地方を活かした小説としては比較的珍しいのではないかと思います。
深町秋生の作品をおそらく全部読んでいる私としてはオチがなんとなく読めたところもありましたが、いかにシンママの政治家をジャンヌ・ダルク的に売り出していくかの具体的な過程や、どのように反社の方々がそういった世界へと入り込んで来るのかといった過程が非常にリアルに描かれており、良い意味で「いつもの深町秋生」の要素を携えた本作を夢中になって読みました。
また、深町秋生のファンであればいくらかストーリーの筋は見えたかとは思いますが、本作のストーリー全体の構成はかなり練ったと思われ、狭い世界でも無限に物語を作れる(=シリーズとして何作も続けられる)要素を証明したと思うので、人気が出ればこの形でしばらくシリーズが続いていくのではないかと思いました。
やっぱり魑魅魍魎溢れる政治で、ただいたいけな女性が担がれるわけが無いのです。
神輿に乗せられる人や乗せる人も、それなりの資質や野心で権謀術数に走るのだと思うと、その生々しさへ妙に納得してしまうところがありました。こういった攻防や上位カーストへと行く過程は、高校生でも政治家でも変わらないのかなとも思いました。
読みやすい上に一度読み始めたら止まらないので、おそらく一気読みしてしまうかと思います。
期待を裏切らない新作ですので、ぜひ手に取ってみて下さい。
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