ヤマダマコト「天化JK」書評
- 2022/01/02
- 23:38
今年一段目の書評です。
セルパブを代表する個人作家であるヤマダマコト氏が天化シリーズのスピンオフ、「天化JK」をリリースしましたのでじっくり読みました。
冒頭は新潟県の新発田(しばた)市で波多野美咲が薬物の取引現場を目撃してしまったところから始まります。
ほぼほぼ輪姦される→殺されるの最悪コンボが発動しそうになった時、いい意味でお約束のヒーロー物のタイミングで本作の主人公にあたる卜部綾乃(うらべ あやの)が登場。仮面ライダーを彷彿とさせるワイルドアクションで悪党達を蹴散らします。
二人は急激に仲良くなるのですが、ストーリーが進むにつれて薬の売人やら地元のヤクザが絡んできたり、なかなかワクワクする展開が待っています。
薬物はどこから流れてきているのか。そして、綾乃の彼氏である月田京四郎がこの薬物禍に関わっている可能性が浮上していき……といったお話ですね。
本作を読むにあたって、たまたま私は執筆中で山田風太郎の「くノ一忍法帖」を盛大にパク……もとい、オマージュした作品を書いているところでしたが、本作にはラノベっぽさもありながら山田風太郎のバトル物っぽさもあり、それでいてミステリ要素も詰まっており実はオモチャ箱をひっくり返したような作品といった側面もあるのかなと思いました。
また、上記でも出てきた綾乃の彼氏である月田京四郎ですが、本作でも私と名前の見たキャラが出てきますね(笑)。「ルナシロ先輩」って呼ばれているし、作中で「グレて、更生して、ボクサーにでもなるのだろうか」といった表記もございます。うまい具合に私のところにも読者が流れてこないかと小汚い打算をこねくり回す毎日です(笑)。
それはさておき、本作の主軸になるのはラノベっぽさというよりはミステリの方かなといった印象です。やはり「山彦」の作者だけあって、単なる能力バトル物で終わらせなかった(そういう展開も好きですが)というか、読者をあっちに振りこっちに振りと良い意味で揺さぶりをかけつつ、真相まで到達するプロセスは下地にミステリの素養がある作者だから出来るものだなと。
これは書き手目線にはなってしまいますが、このミステリ的なアプローチは何作も書いた上で醸造される技術なので、果てしない努力と試行錯誤の上でこの能力は培われたのだと思います。私はこの素養は持っていない。
本作は期待通りの部分が期待通りのままにしておき、その上で一歩上を行く作品といった印象でした。シリーズ物で書いているのもあり、再読する読者や他の作品に手を伸ばす読者もいるでしょう。こういった形で読者がちゃんと待っているシリーズを書ける個人作家は稀有というもの。
なんでも次回作が「銀色天化」になるそうで、そちらも楽しみですね。
追記
誤字脱字報告
コンクリートブロック際の隅に追いやられると、彼ら囲まれた。
→おそらく『彼ら「に」囲まれた』の間違いかと。
セルパブを代表する個人作家であるヤマダマコト氏が天化シリーズのスピンオフ、「天化JK」をリリースしましたのでじっくり読みました。
冒頭は新潟県の新発田(しばた)市で波多野美咲が薬物の取引現場を目撃してしまったところから始まります。
ほぼほぼ輪姦される→殺されるの最悪コンボが発動しそうになった時、いい意味でお約束のヒーロー物のタイミングで本作の主人公にあたる卜部綾乃(うらべ あやの)が登場。仮面ライダーを彷彿とさせるワイルドアクションで悪党達を蹴散らします。
二人は急激に仲良くなるのですが、ストーリーが進むにつれて薬の売人やら地元のヤクザが絡んできたり、なかなかワクワクする展開が待っています。
薬物はどこから流れてきているのか。そして、綾乃の彼氏である月田京四郎がこの薬物禍に関わっている可能性が浮上していき……といったお話ですね。
本作を読むにあたって、たまたま私は執筆中で山田風太郎の「くノ一忍法帖」を盛大にパク……もとい、オマージュした作品を書いているところでしたが、本作にはラノベっぽさもありながら山田風太郎のバトル物っぽさもあり、それでいてミステリ要素も詰まっており実はオモチャ箱をひっくり返したような作品といった側面もあるのかなと思いました。
また、上記でも出てきた綾乃の彼氏である月田京四郎ですが、本作でも私と名前の見たキャラが出てきますね(笑)。「ルナシロ先輩」って呼ばれているし、作中で「グレて、更生して、ボクサーにでもなるのだろうか」といった表記もございます。うまい具合に私のところにも読者が流れてこないかと小汚い打算をこねくり回す毎日です(笑)。
それはさておき、本作の主軸になるのはラノベっぽさというよりはミステリの方かなといった印象です。やはり「山彦」の作者だけあって、単なる能力バトル物で終わらせなかった(そういう展開も好きですが)というか、読者をあっちに振りこっちに振りと良い意味で揺さぶりをかけつつ、真相まで到達するプロセスは下地にミステリの素養がある作者だから出来るものだなと。
これは書き手目線にはなってしまいますが、このミステリ的なアプローチは何作も書いた上で醸造される技術なので、果てしない努力と試行錯誤の上でこの能力は培われたのだと思います。私はこの素養は持っていない。
本作は期待通りの部分が期待通りのままにしておき、その上で一歩上を行く作品といった印象でした。シリーズ物で書いているのもあり、再読する読者や他の作品に手を伸ばす読者もいるでしょう。こういった形で読者がちゃんと待っているシリーズを書ける個人作家は稀有というもの。
なんでも次回作が「銀色天化」になるそうで、そちらも楽しみですね。
追記
誤字脱字報告
コンクリートブロック際の隅に追いやられると、彼ら囲まれた。
→おそらく『彼ら「に」囲まれた』の間違いかと。
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