新作の断片
- 2021/10/05
- 00:50
「コードネームは塔子で決まりだな」
「なにが」
ニヤニヤ笑いを続ける大二郎。
芹沢は虚空を小太刀で斬りつけていた。見た目がポニーテールの少女に見えるので、ガラの悪いくノ一に見える。
「佐藤がそう呼んだんだろう? それならあえてその名を使って報復してやるのも面白いんじゃないかって思ったんでな」
「俺は面白くねえよ」
芹沢は顔を顰める。
スポーツブランドのジャージを着てみたが、筋骨隆々の男であった時と比べてかなり違和感があった。そもそも身体が別人のように萎んでしまったので、見た目がおかしい。これでは目立ち過ぎる。
かといって全身タイツを着るわけにもいかない。キャッツアイは現代の日本で忍べない。
結局某格安量販店に売っていたJKのコスプレセットにした。よく見れば偽物と分かるので職務質問にも捕まらないし、大須賀製薬の工場近くにはソープランドや風俗店が林立している。プロの人だと思わせておけば、逆に目立たない。
「優里奈のブラに付けたGPSはやはり大須賀製薬の工場で止まっている。彼女はそこで捕らえられているはずだ」
「俺達を舐めたらどうなるのか思い知らせてやるさ」
邪悪なJK。小太刀をダーツ状に投げて壁に突き刺した。
「塔子ちゃん。とりあえず『俺』はやめようか」
「あ?」
振り向くアウトレイジ顔。
「入れ物」が少女なだけで、中身はしっかり芹沢だった。
「これから『君』は女の子として振舞わないといけない場面も多々あるだろう」
芹沢が渋い顔で耳を傾ける。
「そこで今まで通りの半グレじゃ困る。清純アイドルみたいな顔になっちまったから、かえって目立つだろう」
「それで?」
「演技でもいい。女になりきれ。佐藤鷹一味を殺す時だけ男に戻ればいい」
「……」
「今日から『君』は塔子だ。漢字が変わっただけ。何もダメージなんか無い。地獄の使者、塔子としてあいつらを追い詰めてやるのさ」
芹沢は最後の中二病めいたくだりにも一切反応する事なく、考え込んだ。
今の今まで男として生きてきた。
仮にもそのアイデンティティーを変えられるものなのか。確信が無かった。
だが――
「いいだろう。地獄のくノ一として奴らを残さず殺してやるよ」
塔子の目には復讐の炎が燃えていた。
優里奈を攫われた怨み。
勝手に性別を変えられた怨み。
――怨みを探せばキリが無かった。
「なにが」
ニヤニヤ笑いを続ける大二郎。
芹沢は虚空を小太刀で斬りつけていた。見た目がポニーテールの少女に見えるので、ガラの悪いくノ一に見える。
「佐藤がそう呼んだんだろう? それならあえてその名を使って報復してやるのも面白いんじゃないかって思ったんでな」
「俺は面白くねえよ」
芹沢は顔を顰める。
スポーツブランドのジャージを着てみたが、筋骨隆々の男であった時と比べてかなり違和感があった。そもそも身体が別人のように萎んでしまったので、見た目がおかしい。これでは目立ち過ぎる。
かといって全身タイツを着るわけにもいかない。キャッツアイは現代の日本で忍べない。
結局某格安量販店に売っていたJKのコスプレセットにした。よく見れば偽物と分かるので職務質問にも捕まらないし、大須賀製薬の工場近くにはソープランドや風俗店が林立している。プロの人だと思わせておけば、逆に目立たない。
「優里奈のブラに付けたGPSはやはり大須賀製薬の工場で止まっている。彼女はそこで捕らえられているはずだ」
「俺達を舐めたらどうなるのか思い知らせてやるさ」
邪悪なJK。小太刀をダーツ状に投げて壁に突き刺した。
「塔子ちゃん。とりあえず『俺』はやめようか」
「あ?」
振り向くアウトレイジ顔。
「入れ物」が少女なだけで、中身はしっかり芹沢だった。
「これから『君』は女の子として振舞わないといけない場面も多々あるだろう」
芹沢が渋い顔で耳を傾ける。
「そこで今まで通りの半グレじゃ困る。清純アイドルみたいな顔になっちまったから、かえって目立つだろう」
「それで?」
「演技でもいい。女になりきれ。佐藤鷹一味を殺す時だけ男に戻ればいい」
「……」
「今日から『君』は塔子だ。漢字が変わっただけ。何もダメージなんか無い。地獄の使者、塔子としてあいつらを追い詰めてやるのさ」
芹沢は最後の中二病めいたくだりにも一切反応する事なく、考え込んだ。
今の今まで男として生きてきた。
仮にもそのアイデンティティーを変えられるものなのか。確信が無かった。
だが――
「いいだろう。地獄のくノ一として奴らを残さず殺してやるよ」
塔子の目には復讐の炎が燃えていた。
優里奈を攫われた怨み。
勝手に性別を変えられた怨み。
――怨みを探せばキリが無かった。
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