新作の断片
- 2021/07/04
- 23:59
気付いた時には、左の頬付近に拳が迫っていた。よけられない。歯を食いしばる。衝撃。視界が黒くなった。
真っ黒になったままグルグルと回る映像。
自分が倒れたらしい事だけは鮮明に分かった。
朦朧としながら、横に転がって跳ね起きる。床に響く鈍い音。幸運にも追撃を免れたらしい。
バックステップして、呼吸を整える。
徐々に回復する視界。意識が回復するとともに、脳内にはジンジンとした痛みが広がっていく。ダメージは確実に蓄積されている。
憤怒(れいじ)が嗤う。ムカつくオールバック。余裕をかました顔に一撃をぶち込んでやりたい。
歯ぎしり。奥歯を噛みしめる。
欠けた歯が地面に転がった。
身体を振る。的を絞らせないようにして、両手に持つ警棒を揺らした。
遠くでステップを踏む憤怒(れいじ)。距離を詰められれば先ほどのような災難に見舞われる。それは御免だった。
左に回り、アウトサイドから警棒を突いていく。サウスポー潰しの王道。外側を取れば、相手の死角から攻撃を打ち込む事が出来る。
軽く素早い突きを連発する。
憤怒(れいじ)はでかい図体を器用に動かしてかわしている。
左手に持った警棒で突きのフェイントから左フックの要領で飛び込み、薙ぐ。下から迫るような軌道。鼻先でかわされる。
同時に、右手に持つ警棒を振り下ろす。文字通り、打ち下ろしの右。
固い警棒が憤怒の側頭部をとらえた。
――殺ったか。
憤怒は頭蓋骨に食い込みそうな勢いで衝突した警棒に目もくれず、そのまま突っ込んで来た。衝撃。まさかのぶちかまし。本能的に顎を引くが、よけきれずに石頭を喰らう。吹っ飛ばされた。
床に背中を叩きつけられ、息が詰まる。規格外の石頭。まるで、頭蓋骨の中にセメントでも流し込んでいるかのような硬さだった。
歪む視界。目を開けたまま気絶しかけているのが分かった。間抜けな光景なのに、妙に頭は冴えて冷静だった。
「打たれ強さには自信があってな」
歪んだ景色の中に、ピカソに描かせたような憤怒が映り込んだ。
「俺は世界最凶の兄貴に育てられた。特殊警棒ぐらいで俺をどうにか出来ると思っていた事がそもそもの間違いだったな」
憤怒が乱れたオールバックを撫でて直す。
真っ黒になったままグルグルと回る映像。
自分が倒れたらしい事だけは鮮明に分かった。
朦朧としながら、横に転がって跳ね起きる。床に響く鈍い音。幸運にも追撃を免れたらしい。
バックステップして、呼吸を整える。
徐々に回復する視界。意識が回復するとともに、脳内にはジンジンとした痛みが広がっていく。ダメージは確実に蓄積されている。
憤怒(れいじ)が嗤う。ムカつくオールバック。余裕をかました顔に一撃をぶち込んでやりたい。
歯ぎしり。奥歯を噛みしめる。
欠けた歯が地面に転がった。
身体を振る。的を絞らせないようにして、両手に持つ警棒を揺らした。
遠くでステップを踏む憤怒(れいじ)。距離を詰められれば先ほどのような災難に見舞われる。それは御免だった。
左に回り、アウトサイドから警棒を突いていく。サウスポー潰しの王道。外側を取れば、相手の死角から攻撃を打ち込む事が出来る。
軽く素早い突きを連発する。
憤怒(れいじ)はでかい図体を器用に動かしてかわしている。
左手に持った警棒で突きのフェイントから左フックの要領で飛び込み、薙ぐ。下から迫るような軌道。鼻先でかわされる。
同時に、右手に持つ警棒を振り下ろす。文字通り、打ち下ろしの右。
固い警棒が憤怒の側頭部をとらえた。
――殺ったか。
憤怒は頭蓋骨に食い込みそうな勢いで衝突した警棒に目もくれず、そのまま突っ込んで来た。衝撃。まさかのぶちかまし。本能的に顎を引くが、よけきれずに石頭を喰らう。吹っ飛ばされた。
床に背中を叩きつけられ、息が詰まる。規格外の石頭。まるで、頭蓋骨の中にセメントでも流し込んでいるかのような硬さだった。
歪む視界。目を開けたまま気絶しかけているのが分かった。間抜けな光景なのに、妙に頭は冴えて冷静だった。
「打たれ強さには自信があってな」
歪んだ景色の中に、ピカソに描かせたような憤怒が映り込んだ。
「俺は世界最凶の兄貴に育てられた。特殊警棒ぐらいで俺をどうにか出来ると思っていた事がそもそもの間違いだったな」
憤怒が乱れたオールバックを撫でて直す。
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