新作の断片
- 2021/04/24
- 00:55
「……なんて言った?」
「彼女は、生まれる場所を間違えただけの」
「そこじゃない」
心拍数が上がる。
「どこよ?」
「その前」
「アリエルちゃんは……」
「アリエルちゃん?」
「ああ。彼女のハンドルネーム。もしかして、知り合い?」
「いや……」
言葉に詰まる。
――アリエル。
「彼女」がいない時に抱いた女の源氏名。
まさか……。
いや、まさかな。
それは考え過ぎだ。
考え過ぎだと思いたい。
ありえない。そんなことはあってはいけない。
頼む。思い違いであってくれ。
「その人とどんな話をしたんだ?」
気絶しそうなのをこらえながら訊く。
「ああ、どこに勤めてるとか、勤務地はどことか。あとは会社の人間関係やら何やら……」
「おい、情報漏洩だぞ」
「いやいや、俺だってバカじゃねえんだから社内情報なんて喋らねえよ。誰と誰が仲がいいとか、どこの営業所とか、せいぜいそんな話だぞ?」
「そうか……」
「なんか青くなってないか?」
「いや、気のせいだ……」
「そうか。真っ青に見えるけどな」
柴田が煙草をふかしはじめる。虚空に揺れる紫煙。俺の魂を暗示しているみたいだった。
「彼女は、生まれる場所を間違えただけの」
「そこじゃない」
心拍数が上がる。
「どこよ?」
「その前」
「アリエルちゃんは……」
「アリエルちゃん?」
「ああ。彼女のハンドルネーム。もしかして、知り合い?」
「いや……」
言葉に詰まる。
――アリエル。
「彼女」がいない時に抱いた女の源氏名。
まさか……。
いや、まさかな。
それは考え過ぎだ。
考え過ぎだと思いたい。
ありえない。そんなことはあってはいけない。
頼む。思い違いであってくれ。
「その人とどんな話をしたんだ?」
気絶しそうなのをこらえながら訊く。
「ああ、どこに勤めてるとか、勤務地はどことか。あとは会社の人間関係やら何やら……」
「おい、情報漏洩だぞ」
「いやいや、俺だってバカじゃねえんだから社内情報なんて喋らねえよ。誰と誰が仲がいいとか、どこの営業所とか、せいぜいそんな話だぞ?」
「そうか……」
「なんか青くなってないか?」
「いや、気のせいだ……」
「そうか。真っ青に見えるけどな」
柴田が煙草をふかしはじめる。虚空に揺れる紫煙。俺の魂を暗示しているみたいだった。
スポンサーサイト