新作の断片
- 2021/04/21
- 01:05
♀
彼をたぶらかして、それとなく情報を引き出した。
バカで扱いやすい男だった。
わたしは自分の半生を語る。不幸で、いたいけな女。
でも、同じ「仕事」で触れ合ってきた仲間を見てきて、わたしは自分が本当に不幸なのかと疑うようになった。
下には下がいた。きっと、さらにその下に位置するかわいそうな女の子だって絶対にいるんだって思う。
だけど、不幸コンテストで優勝したところで何かが変わるわけじゃない。だからわたしは自身をむしばんできた運命を武器にすることにした。
自分の悲運を前面に出して、彼の身辺を洗っていく。
職場を割りだした。会社名もわかった。バカでも知っている一部上場の大企業。そこで中間管理職として働いている。
見いつけた。
腕が軽く震える。理由はわからない。
やっと彼に会える。そう思うと、うれしさよりも現実感のなさの方が勝った。
これは現実なのだろうか?
また運命に裏切られるんじゃないか。
色々ありすぎて、わたしは疑心暗鬼になっている。
「こんどこっちで呑もうよ」
バカな男のメッセージに返事をせずパソコンを閉じると、目を閉じて物思いに耽った。彼からすれば弱い女を助けてやろうという自己満足に浸りたかっただけなんだと思う。あるいは性欲か。
でも――
わたしが弱みを見せるのは彼だけ。
そう、彼だけ。
今は耐えて、再開したら思いっきり泣いて、思いっきり甘えればいい。
きっと彼はわたしを受け止めてくれるはず。
そうだよね?
もし違えば――
その時は、
その時は刺してしまおう。
彼をたぶらかして、それとなく情報を引き出した。
バカで扱いやすい男だった。
わたしは自分の半生を語る。不幸で、いたいけな女。
でも、同じ「仕事」で触れ合ってきた仲間を見てきて、わたしは自分が本当に不幸なのかと疑うようになった。
下には下がいた。きっと、さらにその下に位置するかわいそうな女の子だって絶対にいるんだって思う。
だけど、不幸コンテストで優勝したところで何かが変わるわけじゃない。だからわたしは自身をむしばんできた運命を武器にすることにした。
自分の悲運を前面に出して、彼の身辺を洗っていく。
職場を割りだした。会社名もわかった。バカでも知っている一部上場の大企業。そこで中間管理職として働いている。
見いつけた。
腕が軽く震える。理由はわからない。
やっと彼に会える。そう思うと、うれしさよりも現実感のなさの方が勝った。
これは現実なのだろうか?
また運命に裏切られるんじゃないか。
色々ありすぎて、わたしは疑心暗鬼になっている。
「こんどこっちで呑もうよ」
バカな男のメッセージに返事をせずパソコンを閉じると、目を閉じて物思いに耽った。彼からすれば弱い女を助けてやろうという自己満足に浸りたかっただけなんだと思う。あるいは性欲か。
でも――
わたしが弱みを見せるのは彼だけ。
そう、彼だけ。
今は耐えて、再開したら思いっきり泣いて、思いっきり甘えればいい。
きっと彼はわたしを受け止めてくれるはず。
そうだよね?
もし違えば――
その時は、
その時は刺してしまおう。
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