新作の断片

　彼のおおよその住所を割りだしたわたしは、さらに正確な情報を得るべく調査を続けた。

　Faithbookには友達機能がある。

　ある人のアカウントがあって、その人の友達はだいたい公開されている。そういう人たちを見ていくと、どんな人と付き合っているのか、おおよその交友関係が見えてくる。

　これをお店にいた時に使えば良かったな、なんて思うぐらい。

　メッセージのやり取りを見ていると、その人の人物像が不思議なほどに見えてくる。たかがネットのやり取りと思うかもしれない。だけど、そこにはその人独特の匂いというか、ものの考え方の傾向が見えてくる。

　どうせ仲間しか見ていないだろう――そんなワキの甘さが、個人情報をたどる糸口になる。

　たとえば直接その人の住所を書かなくたって、その友達がどこのソフトボール大会に出場したとか、どこの神社のお祭りに行ったかを調べるだけでもかなりの情報を得ることができる。

　どれだけ当人が一生懸命個人情報を守ったところで、周囲の人間がバカだったら簡単にその足跡はたどれる。残念だけど、それが現状のネット社会が抱える真実だ。

　わたしは彼の友人にアプローチをかけた。

　アリエル――頑張ったらヤれそうなにおいをまといつつ、セックスしか頭に無いサルに声をかけていく。

　彼の心をつかむとはあっという間だった。

　わたしは腐ってもプロだった。軽薄な男の心をつかむなんてチョロいもの。

　彼をたぶらかして、それとなく彼の情報を引き出した。