出すか出さないか微妙な新作の断片

　アスリート並みに気合を入れてトップを守り続けたけど、それでも首位陥落の日は来る。盛りを過ぎた格闘家が一回倒されるとポコポコ倒されるように、わたしは２位、３位と順位を下げると、あっという間にランキングの下り坂を落ちていった。

　たいしてショックはなかった。来るべき日がとうとう来たかとか、そんな気分だった。わたしにしてはだいぶ持った方なのかな。肌も荒れ気味になったし、笑うと目じりに小さいシワができるのがショックだった。

　お客さんの前でも、笑うとまたシワができるって思うと心から笑えなくなった。結果として口だけ笑って目は笑っていない顔になる。その不自然さはどこかできっと伝わっている。

　つらかった。

　いつまでも帰って来ない愛しい人を待つのは。

　つらかった。

　この日がいつまで続くのだろうと鏡に映った自分に語りかけるのが。

　枯れていく。わたしが。

　有機体として、劣化していく。

　人はいつまでも美しくはいられない。

　わかりきっていたことだけど、それがいざ自分の身に起こるとどうしようもなくつらかった。

　いつまでも待つとは思ったけど、やっぱりつらいよ。

　ねえ、どこにいるの？

　わたしはいつまで待てばいいの？

　自分がイタい悲劇のヒロインごっこをやっているのはわかっている。

　わかっているんだけど、ここまで報われない人生なんてあっていいんだろうか？

　神を呪いたくなる。