新作の断片
- 2020/08/05
- 01:17
――レベデフ。
深く窪んだ双眸。雪のように白い肌に付いた夥しい数の傷。息を吸うように人を殺しそうな顔だった。
会場が明るくなる。ライトに照らされるレベデフは、落ち窪んだ目がさらに強調されていた。
ざわめく会場。あちこちから聞こえる歓声、罵声、野次。虫かごで行われる殺し合いに、観客は対岸の火事めいた興味を注いでいた。
ラッパーもどきのクソガキがいつも通り虫かごに入って来る。両選手を中央に集めて、形式だけのルール説明をこなす。
レベデフを見た。蒼い、冷酷な光。闇が吸い寄せられたような{昏|くら}さがあった。無表情で、何を考えているのか分からない。
黒崎は冷静を保ちつつ、鋭い眼光を向けていた。レベデフの視線がかすかに動く。黒崎の顔にある傷を観察しているようだった。
別れて、虫かごの対角線上に立つ。黒崎は軽くシャドウする。身体が軋む。明らかにダメージが残っていた。
だが泣き言を言っている場合ではない。向こうにいるのは文字通り殺し屋。弱みを見せれば、あっという間に息の根を止められる。
――ゴングが鳴った。
深く窪んだ双眸。雪のように白い肌に付いた夥しい数の傷。息を吸うように人を殺しそうな顔だった。
会場が明るくなる。ライトに照らされるレベデフは、落ち窪んだ目がさらに強調されていた。
ざわめく会場。あちこちから聞こえる歓声、罵声、野次。虫かごで行われる殺し合いに、観客は対岸の火事めいた興味を注いでいた。
ラッパーもどきのクソガキがいつも通り虫かごに入って来る。両選手を中央に集めて、形式だけのルール説明をこなす。
レベデフを見た。蒼い、冷酷な光。闇が吸い寄せられたような{昏|くら}さがあった。無表情で、何を考えているのか分からない。
黒崎は冷静を保ちつつ、鋭い眼光を向けていた。レベデフの視線がかすかに動く。黒崎の顔にある傷を観察しているようだった。
別れて、虫かごの対角線上に立つ。黒崎は軽くシャドウする。身体が軋む。明らかにダメージが残っていた。
だが泣き言を言っている場合ではない。向こうにいるのは文字通り殺し屋。弱みを見せれば、あっという間に息の根を止められる。
――ゴングが鳴った。
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