新作の断片
- 2020/07/18
- 01:00
理由なんて何でもいい。
グワイウーは見せ物小屋然とした地下格闘技で好きなだけ暴れ回る事になった。ここでは相手を半殺しにしようが、徹底的に破壊しようが誰からも咎められる事が無かった。
ほとんどの試合は、相手がグワイウーの姿を見た瞬間に決していた。猛獣の檻に閉じ込められた草食動物の絶望。哀れな犠牲者達の顔に浮かぶのは、いつだって弱者が訴える不条理さばかりだった。
グワイウーは好きなだけ暴れて、好きなだけ壊した。相手を。そして、彼らの未来を。
後悔など無かった。良心の呵責などあるはずもない。だが、同時にグワイウーの胸の裡には得体の知れない渇きがあった。骨のある相手と闘う時の、ゾクゾクするような胸の疼き。自分を殺すかもしれない相手の殺気。それらを感じると、たまらなくなった。一方的な暴力に飽きていたグワイウーは、心のどこかでスリルを渇望していた。
――今度の相手は強いらしい。
グワイウーの胸が躍った。胸の裡で仄かに沁みゆく恐怖と躍動する好奇心。相容れぬ心が、猛獣に等しい男の胸で手を取り合って踊っていた。
――さあ、来い。
試合会場へと続く回廊の闇に溶けながら、グワイウーは嗤っていた。周囲を付いて歩くヤクザが戦慄する。鋭い眼の奥に韜晦した恐怖。それは、人間を見る眼ではなかった。
回廊の奥に長方形の光。その扉を開けば、すぐに戦場がある。
血が滾る。筋肉に血液が行き渡り、自分の心臓が早鐘を打つのが分かった。
――さあ、これからお待ちかねの――殺し合いだ。
グワイウーは扉を開ける。
いつもと変わらないけたたましい音楽。狂乱の間。
――お前達こそ、獣なのだ。
騒ぐ観客達に、グワイウーは冷ややかな視線を投げた。
グワイウーは見せ物小屋然とした地下格闘技で好きなだけ暴れ回る事になった。ここでは相手を半殺しにしようが、徹底的に破壊しようが誰からも咎められる事が無かった。
ほとんどの試合は、相手がグワイウーの姿を見た瞬間に決していた。猛獣の檻に閉じ込められた草食動物の絶望。哀れな犠牲者達の顔に浮かぶのは、いつだって弱者が訴える不条理さばかりだった。
グワイウーは好きなだけ暴れて、好きなだけ壊した。相手を。そして、彼らの未来を。
後悔など無かった。良心の呵責などあるはずもない。だが、同時にグワイウーの胸の裡には得体の知れない渇きがあった。骨のある相手と闘う時の、ゾクゾクするような胸の疼き。自分を殺すかもしれない相手の殺気。それらを感じると、たまらなくなった。一方的な暴力に飽きていたグワイウーは、心のどこかでスリルを渇望していた。
――今度の相手は強いらしい。
グワイウーの胸が躍った。胸の裡で仄かに沁みゆく恐怖と躍動する好奇心。相容れぬ心が、猛獣に等しい男の胸で手を取り合って踊っていた。
――さあ、来い。
試合会場へと続く回廊の闇に溶けながら、グワイウーは嗤っていた。周囲を付いて歩くヤクザが戦慄する。鋭い眼の奥に韜晦した恐怖。それは、人間を見る眼ではなかった。
回廊の奥に長方形の光。その扉を開けば、すぐに戦場がある。
血が滾る。筋肉に血液が行き渡り、自分の心臓が早鐘を打つのが分かった。
――さあ、これからお待ちかねの――殺し合いだ。
グワイウーは扉を開ける。
いつもと変わらないけたたましい音楽。狂乱の間。
――お前達こそ、獣なのだ。
騒ぐ観客達に、グワイウーは冷ややかな視線を投げた。
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