触手の夢

　いきなりではありますが、魔王に呼び出されました。

　先日に港町を襲撃し、人間界の貿易ルートに壊滅的なダメージを与えた功労が認められたのだと使い魔は言いました。

　狙ったわけでもありませんし、拭えないギルティを背負ったわたくしに願ってもないチャンスが到来しました。

　先日は護るべき人間を大量虐殺し、多大な犠牲を出しましたが、これで魔王を倒せばわたくしは港町を壊滅させた悪魔のタコから魔王を倒した偉大なるタコに昇格出来ます。

　結局タコから何一つ変わってないじゃないかと言われそうですが、英雄のタコになればそれこそやりたい放題に生きられるでしょう。美女を八人並べて、それぞれの触手であんなことやこんなことが毎日出来るのです。ここまでやって来てとうとう苦労が報われる時が来ました。

　嗚呼、早くありったけの賞賛を浴びながら贅沢な暮らしと触手プレイに明け暮れる毎日を過ごしたい。

　使い魔に「して、魔王様はどちらに？」と訊いたところ、「だいたいあっちの方」とずいぶん雑な教え方で魔王のいる方向を指差しました。

　それなら迎えに来てくれたっていいじゃんとは思いましたが、どこにいても魔王から呼ばれたら自分から馳せ参じるのが魔物のルールなのでしょう。

　深海の中をスイスイススイと進みながら、この闘いが終わった後の事を考えました。

　考えてみたら触手プレイを最初にやった人間（？）なんてもはやわたくししかいないではありませんか。まだだけど。

　嗚呼、早く伝説のパイオニアになりたいです。触手の。

　桃色の野望に燃えながら、私は魔王の城へと全速力で泳いで行きました。