墨まみれのVICTIM
- 2018/12/26
- 17:00
早く陸地に戻りたいわたくしは、近海に面したワイハなる港町を襲撃しに行きました。
タコ仲間には「あそこではタコを悪魔の動物として忌み嫌っている。これは差別だ」と煽動しました。実際のところはよく知りません。
さて、群れとなった私達はあっという間にワイハに辿り着くと、漁港に係留してある漁船を片っ端から襲い、次々と船を海の底へと引きずりこんでいきました。
こうすれば非常事態を収集するために、町の中心部から伝説の勇者とか何かが出てくるに違いありません。あとはそいつの身体をいただくだけでございます。
我々は集団で体をくねらせ、そこそこの津波を起こしました。それは漁港をそこそこに痛めつけ、それなりの人が海に落ちて、いい感じにパニックになりました。
さあて、ここからは大暴れでございます。
集団の先陣を切ったわたくしは、全身を軋ませながらありったけの墨を体内から吐き出しました。墨は人間を飲み込み、陸地を黒く染め上げていきます。
仲間達も次々と墨を吐き出して、水辺でもたつく人間に触手を巻きつけて海中へと引きずり込みました。
さあ、出て来いイケメンで強い勇者よ。
お前に名声を与えて、それと引き換えに身体をいただいてやる。
そのように思ってはいましたが、いつまで経っても勇者は現れる事もなく、仕方が無いので私達タコ軍団は港町を好きなだけ荒らしまわりました。
ええい、勇者よ。いつ出てくるのですか。
イケメンで、強くて、ついでにお金も持っている勇者は?
ですが、勇者が現れる気配は一向に出てきません。
冷静に考えてみたのですが、私よりも筋肉ダルマは強く、筋肉ダルマよりもコウドウ=カイは強く、そして、コウドウ=カイよりも巨大タコは強いです(←今ココ)。そしてコウドウ=カイ以後はそもそも人間ですらありません。
思えば、人間を遠ざかってずいぶんと遠くまでやって来ていました。(遠い目)
そう考えると、実はこの港町で私達を討伐出来る勇者なんていないんじゃね?
そう思った頃には、さっきまで美しかった港町が、すっかり黒い液体と船の残骸まみれになった廃墟と化していました。
……まさかの全滅。完全勝利。37564。
嗚呼、また無駄な殺生をしてしまいました。
考えてみたら、私達を易々と討伐出来る人間がそこいらにいるのであれば、そもそも魔王がこの世界を震撼させているはずが無いのです。
いやあ、なんていうか、すいません。無意味に殺して。
そんな謝罪を口にしたくなりましたが、あいにくタコは喋る事が出来ません。
仲間のタコは喜んでいました。これで私達を忌み嫌う悪しき風習を一つ消す事が出来たのだと。これでただタコという存在で虐げられる事はないのだと。
それを聞きながら、私は密かに、絶対的な正義を定義するのは難しいのだと思いました。
タコ仲間には「あそこではタコを悪魔の動物として忌み嫌っている。これは差別だ」と煽動しました。実際のところはよく知りません。
さて、群れとなった私達はあっという間にワイハに辿り着くと、漁港に係留してある漁船を片っ端から襲い、次々と船を海の底へと引きずりこんでいきました。
こうすれば非常事態を収集するために、町の中心部から伝説の勇者とか何かが出てくるに違いありません。あとはそいつの身体をいただくだけでございます。
我々は集団で体をくねらせ、そこそこの津波を起こしました。それは漁港をそこそこに痛めつけ、それなりの人が海に落ちて、いい感じにパニックになりました。
さあて、ここからは大暴れでございます。
集団の先陣を切ったわたくしは、全身を軋ませながらありったけの墨を体内から吐き出しました。墨は人間を飲み込み、陸地を黒く染め上げていきます。
仲間達も次々と墨を吐き出して、水辺でもたつく人間に触手を巻きつけて海中へと引きずり込みました。
さあ、出て来いイケメンで強い勇者よ。
お前に名声を与えて、それと引き換えに身体をいただいてやる。
そのように思ってはいましたが、いつまで経っても勇者は現れる事もなく、仕方が無いので私達タコ軍団は港町を好きなだけ荒らしまわりました。
ええい、勇者よ。いつ出てくるのですか。
イケメンで、強くて、ついでにお金も持っている勇者は?
ですが、勇者が現れる気配は一向に出てきません。
冷静に考えてみたのですが、私よりも筋肉ダルマは強く、筋肉ダルマよりもコウドウ=カイは強く、そして、コウドウ=カイよりも巨大タコは強いです(←今ココ)。そしてコウドウ=カイ以後はそもそも人間ですらありません。
思えば、人間を遠ざかってずいぶんと遠くまでやって来ていました。(遠い目)
そう考えると、実はこの港町で私達を討伐出来る勇者なんていないんじゃね?
そう思った頃には、さっきまで美しかった港町が、すっかり黒い液体と船の残骸まみれになった廃墟と化していました。
……まさかの全滅。完全勝利。37564。
嗚呼、また無駄な殺生をしてしまいました。
考えてみたら、私達を易々と討伐出来る人間がそこいらにいるのであれば、そもそも魔王がこの世界を震撼させているはずが無いのです。
いやあ、なんていうか、すいません。無意味に殺して。
そんな謝罪を口にしたくなりましたが、あいにくタコは喋る事が出来ません。
仲間のタコは喜んでいました。これで私達を忌み嫌う悪しき風習を一つ消す事が出来たのだと。これでただタコという存在で虐げられる事はないのだと。
それを聞きながら、私は密かに、絶対的な正義を定義するのは難しいのだと思いました。
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