邪推~後で色々と怒られるかもしれないけどやらずにはいられなかった~
- 2017/07/20
- 01:16
「スネーク、どうやら我々は罠にかかったみたいだ」
「どういうことだ?」
「昨日取り上げた小説を憶えているか?」
「ああ、『ルビンの壺が割れた』か」
「昨日から何かがおかしいと思っていたんだ。というのも、なぜ新潮社があの作品を盛大に推したのか」
「期待の新人だからだろう?」
「スネーク、率直に言ってあの作品はどうだった?」
「え? ああ、まあ、湊かなえの『往復書簡』みたいな作品だったな」
「他には?」
「読みやすいが、後半のどんでん返しを解読するための伏線が張られていなかった。アンフェアなトリックだとは思っていたが、予想通りそこにたくさんの読者が噛み付いていた」
「プロモーションについては?」
「面白い企画だとは思ったが、なぜこの作品なのだろうという印象も受けた」
「そこだ、スネーク」
「そこ?」
「そう、そこに新潮社の仕掛けた罠がある」
「また何を?」
「妙だと思っていたんだ。それほど前衛的なわけでもなく、驚くほどのトリックも無い。そんな作品をなぜ社をあげて宣伝するのか」
「たまたまそういう戦略になったんじゃないのか?」
「私も最初はそう思った。だがな、こう考えてみたらどうだ? そもそもあの作品が出版されないとしたら」
「どういうことだ?」
「もしあの作品が別の小説に内包された作中作だとしたら? そして、それに対する読者の反応がそのまま本当の作品に反映されるとしたら?」
「なん、だと……」
「実際にそう考えるとすべて整合性がつくじゃないか。ミステリのくせにわざとアンフェアな仕掛けをしたことも、平易で読みやすい普通のストーリーも……。もしこれらが、すべて自称読書通やらワナビを引き寄せるためのエサだったとしたら……」
「何のために?」
「いい所を突いている。君はこの作品の印象について何と答えた?」
「湊かなえの『往復書簡』に似ている……って、まさか……!」
「そうだ。もしこの作品が湊かなえ本人に書かれたものだったとしたら?」
「確実に俺達はおちょくられていることになるな」
「ああ、まったくだ。だが、そう考えるとすべてが腑に落ちる。社を上げて応援する覆面作家――その正体は、誰もが知る大御所作家で、私達のリアクションですら作品に取り込もうとしているのかもしれない。会社ぐるみのスーパーメタだよ。現にツイッターっぽいSNSの会話を組み込んだ作品はあったからな」
「個人出版界隈の反応は?」
「月狂四郎は期待を裏切らずに食いついている。真っ先に赤っ恥をかくのはあいつだろう。他には折○ル子とくみ○柑、八○謙介の反応が確認されている」
「期待通りの火属性じゃないか」
「さあて、まだキャンペーンは続いている。これから恥をかくのは新潮社かな? それともまんまと策略にはまった私達かな?」
「……ところで少佐」
「なんだ?」
「敵に見つかった。死んだらあんたのせいだ」
(注 言うまでもなくフィクションです。ネタにした人、マジですいません……)
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