「神様とゆく!11泊12日小説を救うための読書の旅」書評
- 2016/10/03
- 20:02
隙間社さん率いる作家の一人、弐杏氏の「神様とゆく!11泊12日小説を救うための読書の旅」を読了しました。
文学的に野心的な伊藤なむあひ氏に対して、弐杏氏の作品は軽快なぶっ飛び作品という印象がありました。今作は自身の持ち味を活かしつつ、さらに伸ばしていったというか、もっと端的に言うと傑作を生み出してしまった印象ですね。
このストーリーを一言で説明するなら、主人公の女の子(わたし)が書店で出会った小説の神様に素敵な本をプレゼンしていくお話ですね。
小説の神様は小説の面白くなさに絶望しており(もしかして彼は一般読者のメタファーなのか?)、小説をこの世界から滅ぼしてしまおうと思っています。
小説好きのわたしは慌てて面白い小説を毎日紹介していき、この世界から小説を守ろうとしていきます。
……なんていうか、この時点でメタ的な要素を感じてしまうのですが(笑)。
それはさておき、本著で「弐杏氏、化けたな」という印象を受けました。小説のプレゼンには下記の実在する作品が出てきます。
安倍公房『箱男』
神坂一『スレイヤーズ!』
江戸川乱歩『屋根裏の散歩者』
大槻ケンヂ『くるぐる使い』
小林泰三『酔歩する男』
乙一『夏と花火と私の死体』
佐藤友哉『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』
高橋源一郎『さようなら、ギャングたち』
ドナルド・バーセルミ『雪白姫』
ちなみに私はフリッカー式の登場でめっちゃテンション上がりました(笑)。
あれ、不思議な小説ですよ。明らかに下手クソなのに揚げ足を取るのがバカバカしいくらいの吸引力を持っているんです。オンタイムで読んだ人はさぞ興奮したんじゃないかと思っています。あと「箱男」は絶対読もうと思いました(笑)。
文学野郎のアンテナを刺激する仕掛けはもちろんの事、そういう試みをやった時にありがちな冗長さをまったく感じさせない(相当努力したのでしょう)。弐杏氏の軽快な筆致がマッチしたというのもあるでしょうね。
最後の方は作品と現実の世界を抽送するやりたい放題ぶり。
これは技術と確信が無いと絶対に出来ない。
隙間社さんの作品は毎度電子書籍でしか出来ない作風ですごく好きですね。
尖っているだけでなく、技術を見せつける方向に走らずエンタメに徹している。「読者を面白がらせるためには自分がバカだと決め付けられても全然構わない」と思っているんだろうなと感じています。
最初に分量をチェックすると、いつもに比べて長編っぽいページ数だったので、正直「あのテンションで長編やって大丈夫だろうか?」という不安は無くもなかったのですが、実際に読んでみるとよく練られた構造とリーダビリティーが共存していてページを捲る手が止まらない。これぞ電書文学だ、と。
ただ、本作は間違った相手に届いたらそいつは嫉妬で怒り狂うでしょうね。これをやりたくて能力が追いつかなかった人がたくさんいるでしょうから。町田康の作品を誰でも書けると思っているタイプの。まあ、町田康読んだ事ないんですけど(←無いんかい)。
くだらない冗談はさておき、これぞ攻める文学です。
ただの一発屋に終わらず、ますますその刃に磨きをかけた弐杏氏の作品に注目です!
文学的に野心的な伊藤なむあひ氏に対して、弐杏氏の作品は軽快なぶっ飛び作品という印象がありました。今作は自身の持ち味を活かしつつ、さらに伸ばしていったというか、もっと端的に言うと傑作を生み出してしまった印象ですね。
このストーリーを一言で説明するなら、主人公の女の子(わたし)が書店で出会った小説の神様に素敵な本をプレゼンしていくお話ですね。
小説の神様は小説の面白くなさに絶望しており(もしかして彼は一般読者のメタファーなのか?)、小説をこの世界から滅ぼしてしまおうと思っています。
小説好きのわたしは慌てて面白い小説を毎日紹介していき、この世界から小説を守ろうとしていきます。
……なんていうか、この時点でメタ的な要素を感じてしまうのですが(笑)。
それはさておき、本著で「弐杏氏、化けたな」という印象を受けました。小説のプレゼンには下記の実在する作品が出てきます。
安倍公房『箱男』
神坂一『スレイヤーズ!』
江戸川乱歩『屋根裏の散歩者』
大槻ケンヂ『くるぐる使い』
小林泰三『酔歩する男』
乙一『夏と花火と私の死体』
佐藤友哉『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』
高橋源一郎『さようなら、ギャングたち』
ドナルド・バーセルミ『雪白姫』
ちなみに私はフリッカー式の登場でめっちゃテンション上がりました(笑)。
あれ、不思議な小説ですよ。明らかに下手クソなのに揚げ足を取るのがバカバカしいくらいの吸引力を持っているんです。オンタイムで読んだ人はさぞ興奮したんじゃないかと思っています。あと「箱男」は絶対読もうと思いました(笑)。
文学野郎のアンテナを刺激する仕掛けはもちろんの事、そういう試みをやった時にありがちな冗長さをまったく感じさせない(相当努力したのでしょう)。弐杏氏の軽快な筆致がマッチしたというのもあるでしょうね。
最後の方は作品と現実の世界を抽送するやりたい放題ぶり。
これは技術と確信が無いと絶対に出来ない。
隙間社さんの作品は毎度電子書籍でしか出来ない作風ですごく好きですね。
尖っているだけでなく、技術を見せつける方向に走らずエンタメに徹している。「読者を面白がらせるためには自分がバカだと決め付けられても全然構わない」と思っているんだろうなと感じています。
最初に分量をチェックすると、いつもに比べて長編っぽいページ数だったので、正直「あのテンションで長編やって大丈夫だろうか?」という不安は無くもなかったのですが、実際に読んでみるとよく練られた構造とリーダビリティーが共存していてページを捲る手が止まらない。これぞ電書文学だ、と。
ただ、本作は間違った相手に届いたらそいつは嫉妬で怒り狂うでしょうね。これをやりたくて能力が追いつかなかった人がたくさんいるでしょうから。町田康の作品を誰でも書けると思っているタイプの。まあ、町田康読んだ事ないんですけど(←無いんかい)。
くだらない冗談はさておき、これぞ攻める文学です。
ただの一発屋に終わらず、ますますその刃に磨きをかけた弐杏氏の作品に注目です!
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