スピード離婚でございます
- 2016/06/30
- 07:00
現在、新幹線に揺られながら記事を更新しております。
突然ではございますが、本日は重大なニュースが二つございます。
先に良いニュースからお伝えしておきましょうか。
本日、折羽のお姉様とこさえた新作が発売となりました。
この作品は私達が結婚するきっかけとなった授かりものでございますが、あらためてこの子達が店頭に並ぶと嬉しい思いがございますね。
内容についてはまるで違う作品ですが、どちらも私達らしい毒が含まれております。この機会をお見逃しなく。
……それでは悪いニュースいきますか?
本当に聞きたいですか? 誰も得なんかしないと思いますけど。
ああ、本当はこのまま終わりたかったのですが、いつかはご報告しなければいけません。それならば先に引き伸ばしても仕方がないので、さっさとこのお知らせを皆様にお届けしておこうかと思います。
先日に折羽のお姉様と結婚する事になった旨をご報告いたしましたが、このたび、私達は別々の道を歩む事になりました。
……離婚早っ!
原因は色々とございます。
折羽のお姉様……ベッドの上ではとても優秀な女性だったのですが、他の要素があまりにも壊滅的でございました。
まずは早朝3時に始まる「怪獣王に私はなるダンス」というものがありまして、これがいきなり強烈でございました。
この時代にレトロなラジカセを持った折羽のお姉様が、まだ薄暗い夜明け前の街を嬉々として闊歩し、何の躊躇もなく爆音を轟かせました。不思議と生き生きしていたのは、体操そのものよりもイタズラを成功させた事に喜んでいたような気がいたします。
暴れん坊と評される私も実は常識人でございます。このような事をしてご近所さんと不仲になっては、のちの生活に支障をきたす事ぐらい理解出来ます。
周囲から漏れ出る殺気をも物とせず、なおもノリノリの妻に血相を変えた私が「何をしているんだ?」と訊きましたところ、「わたしの地元ではみんなこの体操をするのだ~♪」と言って聞きやしません。もうどこからツッコんでいいかわかりやしません。
まあ、文化の違いというのもあるのかもしれません。あれは折羽のお姉様のカルチャーなのかもしれません。そうでなければあの作風は書けないでしょうから。
結婚早々にケンカをするのも嫌でしたので、その場はなんとか溜飲を下げました。なに、近所の人がちょっとの間我慢すればいいだけの話です。殺気はなおも感じていましたが、それを差っ引いても私は妻と揉めたくなかったのです。
その日は寝不足となり、のちの仕事っぷりはまあひどい事。上司に罵られても、譴責は右から左でございます。
夜になったらまた大変でございました。
いつになく無能ぶりこじらせた私が、散々なじられて仕事から帰って参りますと、リビングからは香ばしい匂いが漂ってきました。これはきっと素敵な夕食に違いありません。
「ああ、折羽のお姉様も家庭的な一面があったのだな」と安堵した私は、何の疑いもなく部屋の奥へ行ったわけです。
すると、テーブルの上には昨日まで家族の一員となっていたはずの、豚さんの頭部がお皿に載っていたのです。滅多な事では動じない私でも、これには思わず「ヒイイッ!」と声を上げて尻餅をつくしかありませんでした。
皿の上には虚ろな瞳。それは私に意味ありげな視線を送っておりました。
私が結婚しなければ、彼は死なずに済んだのでしょうか?
折羽のお姉様曰く、腕によりをかけて作った料理で私の信頼を勝ち取りたかったのだそうです。
いや、待ってくださいよ。信頼を勝ち取りたいというところまでは納得出来ますが、だからと言ってずっと一緒に暮らしていた豚をアッサリと料理出来ますか?
明らかにカタギの感覚ではございません。芥川の地獄変に近しいお狂気を感じたのでございます。私はあらためてとんでもない人と結婚してしまったのだと確信したのでございます。
……とまあ、そんな日々がずっと続くとですねえ、「もう無理じゃね?」という気持ちになるのが普通というものでございます。
私は折羽のお姉様を傷付けないよう、音楽性の違いというアプローチから離婚話を進めました。彼女の大嫌いなアイドルの名前(で○ぱ組とか仮○女子とかゆる○ルモ!とか)を連呼しましたところ、すぐに折羽のお姉様にはブチ切れていただけました。ありがたい事です。
「このロリコンめ!」と物を投げつけられましたが、あいにく私は熟女もいける口でございます。
折羽のお姉様も怒っているようでしたが、ここまで被虐の日々に耐えた私としては、むしろ報奨金が欲しいくらいでした。今では慰謝料を請求してやろうかと思っているぐらいでございます。
折羽のお姉様を大吟醸で泥酔させ、なんとか離婚届に判を押してもらった私は、住宅ローンの支払いに関する書類をしれっと残して新幹線に飛び乗りました。現在は目下逃亡中でございます。
二人の間に生まれた子は、それぞれで親権を持つ事となりました。「地獄のリベンジメン」の親権が私で、「ゑぐゐ道徳」が折羽のお姉様でございます。
いやはや、短い結婚生活でございました。思えばオフ会のラブホが幸せの絶頂だったような……。いや、今さらそんな事を申すのも見苦しいというものです。
折羽のお姉様はいい女(ひと)でございました。
ただちょっと、私にとってはスケールが大きすぎたのです。
皆様はお元気でしょうか?
私はまだ元気です。
しばらくは探さないで下さい。
本日リリースとなったこの子達を、どうかよろしくお願い申し上げます。
以上、幸せから一転、絶望への転落を果たした折羽四郎改め月狂四郎でございました。
……名前が戻りました。
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