「ダイヤモンドダスト: ―灰になった宝物― (Hybrid Library)」書評
- 2016/05/11
- 23:59
弥生肇氏著の「ダイヤモンドダスト: ―灰になった宝物― (Hybrid Library)」を読了しました。
先日にも少し触れた通り、作者さんの矜持を感じる力作でした。
ストーリーをざっくり説明します。
本作の主要キャラは四人ですね。
ドラえもんを思わせるマッドサイエンティストのポブ、その妹であるウイン、ポブの友人である軍人サムに、伝説の雪華姫(ダイヤモンドダスト)ことハナ。この四人を中心にしたストーリーが展開されていきます。
ストーリーの序盤ではポブと友人のサムが雪華姫と接触を図ります。
雪華姫は何千年も前から存在する伝説のバケモノとして知られていて、普通の兵士ではまるで歯が立ちません。FFのシヴァと一般人が闘うイメージをしてもらえば分かりやすいかと。
エーテルという(FF7で言うと魔晄にあたる?)パワーを豊富に持っているのですが、その力を天才マッドサイエンティストであるポブの発明品で封じ、雪華姫をまさかのお持ち帰り(笑)。
雪華姫という素性は隠しながら、ポブ、妹のウインと三人で一緒に暮らしていきます。
色々な出来事を共有するにつれて、ハナは次第にに心を開いていきます。
その背後では、雪華姫である彼女を奪還しようと軍が動いていました。
そして、徐々に明かされるハナの哀しい愛の物語とは?
哀が愛に変わる時、そこには何が見えるのか?
……と、かなりざっくりですが、そんなお話です。
さて、ここからは個人的な感想です。
本作を読み始めてまず感じた事は、随分としっかり構築されたライトノベルという印象でした。いや、ライトノベルという形態をとっただけのエンタメ作品という表現の方が正しいでしょうか。
よくね、「ああ、ええ、良質のライトノベルですね」っていう感想は聞くと思うのです。
ですが、本作はある種アナ雪的なテンプレっぽさを包含しつつも、他作品とは明白な違いを打ち出している。千年越しの愛というある意味ベタなテーマではあるものの、展開が二重底、三重底になっているから読んでいてハッとさせられる場面が何度もある。
主人公ポブの印象がハナに気圧されている感が無くもないですが――というかこの小説の主人公はハナと言った方が適切なのかもしれません――ストーリーは本当によく練られていると思いました。
良い作品というのはね、現代社会が抱える闇をファンタジーみたいに一見関係無い世界感を媒介にして当てこするんです(笑)。
「これはリアルで言うあれの事を言っているんだろうな」という場面も散見され、作者さんはあくまでライトノベルというフィルターを通して自分の伝えたいメッセージを発信したいだけなのではないか、という印象を受けました。ある種文豪然とした考え方ですね。語彙も豊富でしたので、他の作風も出来る方なのでしょう。
高校生だけではなく、二十代、三十代の読者でも考えさせられるテーマを扱っている。そういう意味ではライトノベル=薄っぺらいという偏見を一蹴する魅力を持っています。
あとがきで知りましたが、これを一次選考で落としたバカな下読みがいるみたいです。クオリティーでは書店に並んでいても遜色ないレベルですし、人間の普遍的テーマを諷喩的に扱っているという点ではもっと敬意を払われていい作品だと思います。あの下読みには引退勧告を出すべきだと思いました(笑)。
とベタ褒めですが、この作家さんはいちいち言わなくても自分で自著の課題を見つけて頑張るタイプだと思います。ですので、重箱の隅をつつくようなマネをしなくても勝手に成長するでしょう。
また楽しみなインディーズ作家が一人増えました。
先日の無料配布で手に入れた方はぜひこの機会に読んでみて下さいね。
先日にも少し触れた通り、作者さんの矜持を感じる力作でした。
ストーリーをざっくり説明します。
本作の主要キャラは四人ですね。
ドラえもんを思わせるマッドサイエンティストのポブ、その妹であるウイン、ポブの友人である軍人サムに、伝説の雪華姫(ダイヤモンドダスト)ことハナ。この四人を中心にしたストーリーが展開されていきます。
ストーリーの序盤ではポブと友人のサムが雪華姫と接触を図ります。
雪華姫は何千年も前から存在する伝説のバケモノとして知られていて、普通の兵士ではまるで歯が立ちません。FFのシヴァと一般人が闘うイメージをしてもらえば分かりやすいかと。
エーテルという(FF7で言うと魔晄にあたる?)パワーを豊富に持っているのですが、その力を天才マッドサイエンティストであるポブの発明品で封じ、雪華姫をまさかのお持ち帰り(笑)。
雪華姫という素性は隠しながら、ポブ、妹のウインと三人で一緒に暮らしていきます。
色々な出来事を共有するにつれて、ハナは次第にに心を開いていきます。
その背後では、雪華姫である彼女を奪還しようと軍が動いていました。
そして、徐々に明かされるハナの哀しい愛の物語とは?
哀が愛に変わる時、そこには何が見えるのか?
……と、かなりざっくりですが、そんなお話です。
さて、ここからは個人的な感想です。
本作を読み始めてまず感じた事は、随分としっかり構築されたライトノベルという印象でした。いや、ライトノベルという形態をとっただけのエンタメ作品という表現の方が正しいでしょうか。
よくね、「ああ、ええ、良質のライトノベルですね」っていう感想は聞くと思うのです。
ですが、本作はある種アナ雪的なテンプレっぽさを包含しつつも、他作品とは明白な違いを打ち出している。千年越しの愛というある意味ベタなテーマではあるものの、展開が二重底、三重底になっているから読んでいてハッとさせられる場面が何度もある。
主人公ポブの印象がハナに気圧されている感が無くもないですが――というかこの小説の主人公はハナと言った方が適切なのかもしれません――ストーリーは本当によく練られていると思いました。
良い作品というのはね、現代社会が抱える闇をファンタジーみたいに一見関係無い世界感を媒介にして当てこするんです(笑)。
「これはリアルで言うあれの事を言っているんだろうな」という場面も散見され、作者さんはあくまでライトノベルというフィルターを通して自分の伝えたいメッセージを発信したいだけなのではないか、という印象を受けました。ある種文豪然とした考え方ですね。語彙も豊富でしたので、他の作風も出来る方なのでしょう。
高校生だけではなく、二十代、三十代の読者でも考えさせられるテーマを扱っている。そういう意味ではライトノベル=薄っぺらいという偏見を一蹴する魅力を持っています。
あとがきで知りましたが、これを一次選考で落としたバカな下読みがいるみたいです。クオリティーでは書店に並んでいても遜色ないレベルですし、人間の普遍的テーマを諷喩的に扱っているという点ではもっと敬意を払われていい作品だと思います。あの下読みには引退勧告を出すべきだと思いました(笑)。
とベタ褒めですが、この作家さんはいちいち言わなくても自分で自著の課題を見つけて頑張るタイプだと思います。ですので、重箱の隅をつつくようなマネをしなくても勝手に成長するでしょう。
また楽しみなインディーズ作家が一人増えました。
先日の無料配布で手に入れた方はぜひこの機会に読んでみて下さいね。
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