「テーブルの上のスカイラーク」書評(自虐ネタ多め)
- 2016/01/27
- 23:59
「山彦」に続き、ヤマダマコト氏の「テーブルの上のスカイラーク」を読了しました。
予想はしていましたが、今作でもとんでもないバケモノっぷりを披露しています。
ストーリーをざっくり説明すると、舞台は新潟県燕市。「つばめ卓球クラブ」という、どちらかと言えばシニアの選手が中心となった卓球道場があります。そこでは三十路を迎えつつもなお夢を追い続ける不屈のドリーマー早川や、聴力に障害を待つ葉月(はづき)、天才卓球少年の伊織(いおり)、その祖父の倉島、コーチの木村、噂好きのオバチャン大橋など濃いメンツがいます。
そんな「つばめ卓球クラブ」にある日新人が入部。金髪のイケメンフリーター、坂本昴と謎の美女、神田千代ですね。ちなみに表紙の女性はおそらく千代さんのイメージではないかと思っています。
この坂本昴が実は小学校時代に全国優勝しているバケモノなのですが、彼がこんな弱小クラブにやってきた理由は? そして、千代さんの知られざる仕事と、卓球に絡まる運命の糸とは……? と、そんなお話です。
今作も見どころは盛りだくさんなのですが、あまりにも見所がありすぎるのであえて私の偏った視点で本作の魅力を紹介していきます。
本作は商品説明にある通り、多人数の一人称視点を移りゆく群像劇なのですが、どれも主役級にキャラが立っています。「山彦」でもそうでしたが、見た目の描写が少ないにも関わらず、話し方やアクションで見事に各登場人物の性格を描いている。しかもそれが多彩で、まるで実在する人物をいちいちモデルにしたのではないか? という気にさえなってきます。
特にねえ、千代さんの人物像が明らかになっていく時、その描き方があまりにリアルだったのでちょっと笑ってしまいました(笑)。いますよね、ああいう人。
今作では卓球モノという事で、リアルな卓球の試合が描かれています。おそらく作者さんは卓球の(相当な)ガチ勢だった人なのではないかと思います。そうでないとあそこまで踏み込んだ描写は出来ない。
ただね、その卓球シーンすらどうでもよくなるくらい(失礼)の魅力が今作にはあるのです。
早川さん、アンタは俺か
珍しく副題を付けてしまいました。
前述お通り今作ではリアルな卓球野郎の人生がかなりの密度で描かれています。
その中で特に思い入れが強かったのは(おそらく作者さんもそうだったであろう)三十路のドリーマー早川さんですね。
よくね、センスが無いけど頑張ってる選手っているじゃないですか。まあ、私がボクシング界ではそんな部類の人なんですけど(笑)。
誰もがね、最初は野望を持ってその競技をやるわけですよ。それこそ、世界の頂点に登りつめてやるぐらいの勢いで。でもね、やっぱり現実って厳しいんですよ。色んな事が作用して大事な試合を落としちゃったり、周囲から「無理だ」とか「お前に出来るわけない」とか色々言われている内に本当にあった才能まで枯らされたりとか、その辺に挫折の地雷が色々転がっているわけですよ。
それを私や早川さんのような人間はちょいちょい踏むんですが(笑)、諦めの悪い努力家っていうのは地雷を踏みながら前進していくんですね。それこそ、死に場所を探しているみたいに。
やっぱり個人競技のせいかそういう共通点は多く、本当にたま~にですけど「アレ? 俺って天才じゃねえ?」と思う瞬間があるんですよ。それは強豪相手に善戦したりとか、技術が一気に伸びた時なんですけど。で、「お前、たまにすごいよね」とか言われるわけです。それで夢を見てしまうんですね(笑)。
まあ分かるんですよ。周囲の視線や皮肉が色んなところに突き刺さっているのは分かるんですよ。カマトトぶってますけど(笑)。でもね、やめたらもっと恥ずかしいんですよ。分かりますか?
ちょっと変なスイッチが入りかけたので戻しますが(笑)、結論を言えばセンスが無かろうが成功しなかろうがいいんですよ。本人さえ満足すれば。
この作品の素晴らしいところは、弱小クラブにヒーロー入って優勝! みたいな(ある意味安易な)流れに行かなかった事ですね。読んだ方なら分かると思いますけど、別にいいんですよ、ダメだって。
これは広義のわなびの話――ちなみにフィールドは違えど、私も広義のわなびを現在書いています。パクりの謗りを受けないために一応表記――なわけで、その姿は現在あらゆる業界で不遇の時代を歩んでいて、これからも歩んでいく見込みの方に(笑)大きな感銘を与えるのではないかと思います。
別に負け犬だっていいじゃないですか。
負け犬には負け犬なりの美学があるんですよ。たまにオッサンになってから成功するアンヴィルみたいなバンドもあるわけで、40代のバーナード・ホプキンスが老獪さで若きホープをオモチャにしてライトヘビー級王座に就く事だってあるわけです。それは極少の奇跡かもしれないけど、そういう事は本当にあるのですよ。だから、辞め時を見失うんですけどね(笑)。
後半書籍の感想関係ねえじゃねえかというツッコミはさておき、胸の熱くなる話でしたね。
イタいオッサンっていうのはイタさを通り越すとカッコ良くなるんだな、と。自分にも向かって呟いてみたいと思います。
いいんですよ、ロートルが夢を見たって。諦めるのなんて誰でも出来るんですから。
それぐらいなら、前のめりに倒れた方が幸せな顔で死ねそうじゃないですか(笑)。
予想はしていましたが、今作でもとんでもないバケモノっぷりを披露しています。
ストーリーをざっくり説明すると、舞台は新潟県燕市。「つばめ卓球クラブ」という、どちらかと言えばシニアの選手が中心となった卓球道場があります。そこでは三十路を迎えつつもなお夢を追い続ける不屈のドリーマー早川や、聴力に障害を待つ葉月(はづき)、天才卓球少年の伊織(いおり)、その祖父の倉島、コーチの木村、噂好きのオバチャン大橋など濃いメンツがいます。
そんな「つばめ卓球クラブ」にある日新人が入部。金髪のイケメンフリーター、坂本昴と謎の美女、神田千代ですね。ちなみに表紙の女性はおそらく千代さんのイメージではないかと思っています。
この坂本昴が実は小学校時代に全国優勝しているバケモノなのですが、彼がこんな弱小クラブにやってきた理由は? そして、千代さんの知られざる仕事と、卓球に絡まる運命の糸とは……? と、そんなお話です。
今作も見どころは盛りだくさんなのですが、あまりにも見所がありすぎるのであえて私の偏った視点で本作の魅力を紹介していきます。
本作は商品説明にある通り、多人数の一人称視点を移りゆく群像劇なのですが、どれも主役級にキャラが立っています。「山彦」でもそうでしたが、見た目の描写が少ないにも関わらず、話し方やアクションで見事に各登場人物の性格を描いている。しかもそれが多彩で、まるで実在する人物をいちいちモデルにしたのではないか? という気にさえなってきます。
特にねえ、千代さんの人物像が明らかになっていく時、その描き方があまりにリアルだったのでちょっと笑ってしまいました(笑)。いますよね、ああいう人。
今作では卓球モノという事で、リアルな卓球の試合が描かれています。おそらく作者さんは卓球の(相当な)ガチ勢だった人なのではないかと思います。そうでないとあそこまで踏み込んだ描写は出来ない。
ただね、その卓球シーンすらどうでもよくなるくらい(失礼)の魅力が今作にはあるのです。
早川さん、アンタは俺か
珍しく副題を付けてしまいました。
前述お通り今作ではリアルな卓球野郎の人生がかなりの密度で描かれています。
その中で特に思い入れが強かったのは(おそらく作者さんもそうだったであろう)三十路のドリーマー早川さんですね。
よくね、センスが無いけど頑張ってる選手っているじゃないですか。まあ、私がボクシング界ではそんな部類の人なんですけど(笑)。
誰もがね、最初は野望を持ってその競技をやるわけですよ。それこそ、世界の頂点に登りつめてやるぐらいの勢いで。でもね、やっぱり現実って厳しいんですよ。色んな事が作用して大事な試合を落としちゃったり、周囲から「無理だ」とか「お前に出来るわけない」とか色々言われている内に本当にあった才能まで枯らされたりとか、その辺に挫折の地雷が色々転がっているわけですよ。
それを私や早川さんのような人間はちょいちょい踏むんですが(笑)、諦めの悪い努力家っていうのは地雷を踏みながら前進していくんですね。それこそ、死に場所を探しているみたいに。
やっぱり個人競技のせいかそういう共通点は多く、本当にたま~にですけど「アレ? 俺って天才じゃねえ?」と思う瞬間があるんですよ。それは強豪相手に善戦したりとか、技術が一気に伸びた時なんですけど。で、「お前、たまにすごいよね」とか言われるわけです。それで夢を見てしまうんですね(笑)。
まあ分かるんですよ。周囲の視線や皮肉が色んなところに突き刺さっているのは分かるんですよ。カマトトぶってますけど(笑)。でもね、やめたらもっと恥ずかしいんですよ。分かりますか?
ちょっと変なスイッチが入りかけたので戻しますが(笑)、結論を言えばセンスが無かろうが成功しなかろうがいいんですよ。本人さえ満足すれば。
この作品の素晴らしいところは、弱小クラブにヒーロー入って優勝! みたいな(ある意味安易な)流れに行かなかった事ですね。読んだ方なら分かると思いますけど、別にいいんですよ、ダメだって。
これは広義のわなびの話――ちなみにフィールドは違えど、私も広義のわなびを現在書いています。パクりの謗りを受けないために一応表記――なわけで、その姿は現在あらゆる業界で不遇の時代を歩んでいて、これからも歩んでいく見込みの方に(笑)大きな感銘を与えるのではないかと思います。
別に負け犬だっていいじゃないですか。
負け犬には負け犬なりの美学があるんですよ。たまにオッサンになってから成功するアンヴィルみたいなバンドもあるわけで、40代のバーナード・ホプキンスが老獪さで若きホープをオモチャにしてライトヘビー級王座に就く事だってあるわけです。それは極少の奇跡かもしれないけど、そういう事は本当にあるのですよ。だから、辞め時を見失うんですけどね(笑)。
後半書籍の感想関係ねえじゃねえかというツッコミはさておき、胸の熱くなる話でしたね。
イタいオッサンっていうのはイタさを通り越すとカッコ良くなるんだな、と。自分にも向かって呟いてみたいと思います。
いいんですよ、ロートルが夢を見たって。諦めるのなんて誰でも出来るんですから。
それぐらいなら、前のめりに倒れた方が幸せな顔で死ねそうじゃないですか(笑)。
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