次回作は大体こんな感じになる
- 2015/11/08
- 23:49
次回作の執筆状況ですが、大体40,000字ぐらいまで行きました。まだまだ終わらないので今回は中編ぐらいですかね。
ブログは時間を食われるので、次回作のサンプルをちょっとばかり曝してみます。
意味わかんない部分がかなりあるでしょうけど、そこはご愛嬌で。
(以下、新作サンプル)
あの日になるまで、妹がいることすら忘れていたような気がする。
俺が手の付けられない不良になったがために、叔父の家へと隔離された幼き妹。
――夢(ユメ)とは母親の葬儀で再会した。
母親が亡くなったこと自体はそんなに驚くべき話でもなかったと思う。俺がゴミだったのは間違いない。だが、ゴミを生んだ母親も、どうしようもない人間だったのもまた事実だ。
母親の死因は薬物の過剰摂取によるショック死だった。かつて俺の脅威となっていた人間は、その体と精神を薬物に破壊されつくして死んだ。棺に入った彼女の顔は、自分の母親とは思えないぐらい老けて見えた。
涙は出なかった。哀しいとは思わなかった。そして、目の前の光景が現実のようにも感じられなかった。これを人は虚無感と呼ぶのだろうか?
雨が降っていた。灰色の空は、母親の門出を祝福するつもりは毛頭無いようだった。日頃の行いを神が見ているというのは本当らしい。
おそらく後にも先にも片手で数えられるぐらいしか着ないであろう黒のスーツに身を固めた俺は、叔父に支えられて傘を差している妹を見つけた。傘で顔を隠すようにこちらを見上げる少女は、この世の穢れというものを知らない、無垢な天使のような顔だった。
母の抜け殻を前にした夢も、涙を流してはいなかった。彼女にしてみれば、自分を親戚の家に任せっきりにしていた肉親よりも、愛情を注ぎ育ててくれた叔父や叔母の方が身近な存在になっているのだろう。俺はクズのまま死んでいった母親の痴態を、妹に詫びたくなった。
葬式が終わると、火葬の間に親戚や故人の関係者が集まって食事をした。やはり、そこにいる人間も数えるほどしかいない。名前も知らない遠い親戚は。この俺を見て「こんな立派な息子がいたなんて」と涙を流した。俺にはタチの悪いジョークにしか感じられない。
食事会では夢の今後について叔父、叔母と話し合った。子供のいない彼らにすれば、夢は娘の存在に等しかった。だからお互いの了解のもと、夢は今まで通り彼らの家で育てることになった。その方が彼女も幸せだろう。
夢とは少しだけ会話をした。俺達は水と油のような存在だと思っていたが、そこはやはり兄妹のせいか、意外に会話が噛み合った。
わずかな時間ではあったが、長らく俺の中で存在していなかった妹と会話をするというのは不思議な体験だった。
別れ際に、携帯電話のメールアドレスを交換した。おそらく一回もメールしないだろう。
斎場から出ると、雨は止んでいたが、空はまだ曇っていた。
妹と叔父叔母夫婦は自家用車へと戻って行った。車が発進する時、妹は窓ガラス越しに手を振っている。知らぬ間に、俺の手はそれにこたえていた。
もう一度空を見上げてみる。
雨は止んだ。でも、空は曇ったままだ。
でも、雨は止んだ。
それでいいじゃないか。
ブログは時間を食われるので、次回作のサンプルをちょっとばかり曝してみます。
意味わかんない部分がかなりあるでしょうけど、そこはご愛嬌で。
(以下、新作サンプル)
あの日になるまで、妹がいることすら忘れていたような気がする。
俺が手の付けられない不良になったがために、叔父の家へと隔離された幼き妹。
――夢(ユメ)とは母親の葬儀で再会した。
母親が亡くなったこと自体はそんなに驚くべき話でもなかったと思う。俺がゴミだったのは間違いない。だが、ゴミを生んだ母親も、どうしようもない人間だったのもまた事実だ。
母親の死因は薬物の過剰摂取によるショック死だった。かつて俺の脅威となっていた人間は、その体と精神を薬物に破壊されつくして死んだ。棺に入った彼女の顔は、自分の母親とは思えないぐらい老けて見えた。
涙は出なかった。哀しいとは思わなかった。そして、目の前の光景が現実のようにも感じられなかった。これを人は虚無感と呼ぶのだろうか?
雨が降っていた。灰色の空は、母親の門出を祝福するつもりは毛頭無いようだった。日頃の行いを神が見ているというのは本当らしい。
おそらく後にも先にも片手で数えられるぐらいしか着ないであろう黒のスーツに身を固めた俺は、叔父に支えられて傘を差している妹を見つけた。傘で顔を隠すようにこちらを見上げる少女は、この世の穢れというものを知らない、無垢な天使のような顔だった。
母の抜け殻を前にした夢も、涙を流してはいなかった。彼女にしてみれば、自分を親戚の家に任せっきりにしていた肉親よりも、愛情を注ぎ育ててくれた叔父や叔母の方が身近な存在になっているのだろう。俺はクズのまま死んでいった母親の痴態を、妹に詫びたくなった。
葬式が終わると、火葬の間に親戚や故人の関係者が集まって食事をした。やはり、そこにいる人間も数えるほどしかいない。名前も知らない遠い親戚は。この俺を見て「こんな立派な息子がいたなんて」と涙を流した。俺にはタチの悪いジョークにしか感じられない。
食事会では夢の今後について叔父、叔母と話し合った。子供のいない彼らにすれば、夢は娘の存在に等しかった。だからお互いの了解のもと、夢は今まで通り彼らの家で育てることになった。その方が彼女も幸せだろう。
夢とは少しだけ会話をした。俺達は水と油のような存在だと思っていたが、そこはやはり兄妹のせいか、意外に会話が噛み合った。
わずかな時間ではあったが、長らく俺の中で存在していなかった妹と会話をするというのは不思議な体験だった。
別れ際に、携帯電話のメールアドレスを交換した。おそらく一回もメールしないだろう。
斎場から出ると、雨は止んでいたが、空はまだ曇っていた。
妹と叔父叔母夫婦は自家用車へと戻って行った。車が発進する時、妹は窓ガラス越しに手を振っている。知らぬ間に、俺の手はそれにこたえていた。
もう一度空を見上げてみる。
雨は止んだ。でも、空は曇ったままだ。
でも、雨は止んだ。
それでいいじゃないか。
スポンサーサイト