「夢を与える」書評
- 2015/05/27
- 12:00
先週から読みだした綿矢りさの「夢を与える」を読了しました。
そもそもWOWOWのドラマで「なにこれ面白そう」と思って手に取ったのですが、読み終わって色々と考えさせられる事がありました。
本作は主人公の夕子が幼少時に芸能界入りをして、周囲が抱く幻想通りに生きなければいけないという息苦しさと闘いつつ不器用に生きていく話なのですが、まずいの一番に思い出したのは太宰治の「人間失格」ですね。もう換骨奪胎と言っていいぐらい、人が持つアイデンティティーと他者の自分に対する評価の乖離に関するテーマを扱っていると思いました。
別に芸能人じゃなくてもいいのですが、周囲が自分に対して勝手に思い描くイメージ(主に過大評価)は、時に恐ろしいまでの重荷になる事がありますよね。他者から「あの人は心が綺麗だ」とか言われて、「違う! 私はそんなんじゃない!」なんて魂が叫んでた瞬間は誰にでもあるでしょう。
この最たるものが今全盛期(をちょっと過ぎた?)アイドルなんじゃないですかね。彼女達は私達と同じ人間でありながら、ヘタをするとウ○コをしない人だと思われています(笑)。チヤホヤされだした頃は楽しいのでしょうが、毎日毎日四六時中人の夢を壊さないよう配慮するのはさぞ大変でしょう。
いやあ、大変だと思いますよ。アンケートやインタビューでも本当に思っている事は言えないし書けないんですから。
そんな彼らや彼女らに人はこう言います。
ありのままの君が好き。
――ウソです(笑)。
彼らは自分の見たい角度でしかその偶像を眺めようとはしないのです。だから演じる側はずっと息苦しいのです。
ずっと周囲が望んでた自分を演じて、演じて、どこかでポキリと折れてしまう。子役みたいに最初っから望まれている姿しか見せられないという生き方をしてる人は、やっぱり早々にメンタルが磨り減ってしまうのかもしれません。国は違いますが、マコーレ・カルキンがグレたのもなんか分かる気がします。
ある意味、今の時代にはもっと変わってていいという思想というか、他者が自分と同じく堕落したり道を間違っても寛容でいてあげられる精神が重要なのではないか、なんて思いました。今の世間はティーンズのアイドルがタバコを吸えばヘタしたら引退にまで追い込みますからねえ――自分の事は棚に上げて。
ちなみに本作では、大半の読者が知りたいはずのところをバッサリ切ってあります。ある意味これは逃げたのではなく、作者から読者がこの物語に対して自発的に何かを考えるようにしたんだと思いますね(って純文学ってそもそもこういう終り方が多いのですが)。
他にも思った事はあるのですが、多分これ書いたら炎上するので(笑)やっぱやめときます。
今も昔も、人は在り方に悩むようです。
そもそもWOWOWのドラマで「なにこれ面白そう」と思って手に取ったのですが、読み終わって色々と考えさせられる事がありました。
本作は主人公の夕子が幼少時に芸能界入りをして、周囲が抱く幻想通りに生きなければいけないという息苦しさと闘いつつ不器用に生きていく話なのですが、まずいの一番に思い出したのは太宰治の「人間失格」ですね。もう換骨奪胎と言っていいぐらい、人が持つアイデンティティーと他者の自分に対する評価の乖離に関するテーマを扱っていると思いました。
別に芸能人じゃなくてもいいのですが、周囲が自分に対して勝手に思い描くイメージ(主に過大評価)は、時に恐ろしいまでの重荷になる事がありますよね。他者から「あの人は心が綺麗だ」とか言われて、「違う! 私はそんなんじゃない!」なんて魂が叫んでた瞬間は誰にでもあるでしょう。
この最たるものが今全盛期(をちょっと過ぎた?)アイドルなんじゃないですかね。彼女達は私達と同じ人間でありながら、ヘタをするとウ○コをしない人だと思われています(笑)。チヤホヤされだした頃は楽しいのでしょうが、毎日毎日四六時中人の夢を壊さないよう配慮するのはさぞ大変でしょう。
いやあ、大変だと思いますよ。アンケートやインタビューでも本当に思っている事は言えないし書けないんですから。
そんな彼らや彼女らに人はこう言います。
ありのままの君が好き。
――ウソです(笑)。
彼らは自分の見たい角度でしかその偶像を眺めようとはしないのです。だから演じる側はずっと息苦しいのです。
ずっと周囲が望んでた自分を演じて、演じて、どこかでポキリと折れてしまう。子役みたいに最初っから望まれている姿しか見せられないという生き方をしてる人は、やっぱり早々にメンタルが磨り減ってしまうのかもしれません。国は違いますが、マコーレ・カルキンがグレたのもなんか分かる気がします。
ある意味、今の時代にはもっと変わってていいという思想というか、他者が自分と同じく堕落したり道を間違っても寛容でいてあげられる精神が重要なのではないか、なんて思いました。今の世間はティーンズのアイドルがタバコを吸えばヘタしたら引退にまで追い込みますからねえ――自分の事は棚に上げて。
ちなみに本作では、大半の読者が知りたいはずのところをバッサリ切ってあります。ある意味これは逃げたのではなく、作者から読者がこの物語に対して自発的に何かを考えるようにしたんだと思いますね(って純文学ってそもそもこういう終り方が多いのですが)。
他にも思った事はあるのですが、多分これ書いたら炎上するので(笑)やっぱやめときます。
今も昔も、人は在り方に悩むようです。
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