ハッピーエンドとは何か
- 2014/12/08
- 23:49
最近の百田尚樹バッシングがきっかけで、渦中の「殉愛」と「モンスター」を読んでみました。
「殉愛」の方については地雷な話題である事と情報不足から言及を差し控えますが(笑)、本としてはとても面白かった。というわけで今回は「モンスター」について語ります。
「モンスター」の作中では、桁違いのブスが整形手術をして世にも稀な美人になり、狂ってはいるものの、ある種「殉愛」よりも純愛なんじゃないか? というストーリーを展開します。
ここで注意書きをしておきますが、今回はちょいと半ネタバレな話も書くので、先が気になる方はこの先を読まないで下さい。
「作中のイカれた整形美人が迎えるハッピーエンドって何だろう?」って考えると、普通は昔恋をしていた人と一緒になるっていう結末だと思うんです。でも、それだと何か違う気もしますね。予防線かどうかは分かりませんけど、作中に出てきたヒーローは既婚者で、主人公の鈴原未帆は彼を弄び、破壊します。極悪人です。
そうなるとバッドエンドがこの作品には相応しいのかと思うのですが、その終り方がそこらの作品とはまた違う切り口になっているんですよね。
大体こういう整形モノって、例えばボトックスのやりすぎで能面みたいな顔になる等、手術のリバウンドで美貌を失うような因果応報的結末を迎える事が多い気がするんですが、そうはならないんですね。
半分結末をバラしたようなものですが(笑)、一応結果については伏せておきます。で、今作で思ったのは、実はこれ、ハッピーエンドなんじゃないか? と。
主人公の鈴原未帆にとって、その美しさを失うのは死ぬ事なんか問題じゃないぐらい辛い事だったと思うんです。過去に醜い容姿をしていたがために、彼女は色んな屈辱を味わい、色んなものを失ってきているわけですよ。
最後の最後で女の意地だけは守り通したところを見ると、何か「良かったね」と声を掛けたくなってしまう部分がなきにしもあらず……。
あの路線を進んでいた限りでは、これ以上ないくらい幸せな結末だったのではないかと思います。それ以上行けば、その先に待っているのは破滅しか無い事が分かっているからです。
随分昔の事ですが、小学校時代の教師が「俺は美しいまま死にたい」と自殺する若者が増えているという話をしたのを憶えています。当時の私は「なんじゃそりゃ」と思っていたのですが、一度ブラックすぎる環境に置かれた時は、なんとなしに「自暴自棄になって醜態を曝す前に、全てを終わらせてしまおう」とうっすら思った事をよく憶えています。その時に小学校時代の話を思い出したんですけどね。
絶対にマネしたくはないですけど、パーっと花火みたいに周囲を魅了して、そのまますぐ消えてしまう美しさに惹かれる心境自体はなんだか理解出来る気がします。ある種、シド・ヴィシャスやカート・コバーンに抱く憧憬と似たものがあるのかも。
鈴原未帆は、自分が花火として終われるよう、他者を魅了したまま終われるよう、知らぬ間に自分自身へ時限爆弾を仕掛けたのではないか? そんな事すら思うのです。
ブラックではありますが、狂人には狂人なりのハッピーエンドがあるという事ですね。
「殉愛」の方については地雷な話題である事と情報不足から言及を差し控えますが(笑)、本としてはとても面白かった。というわけで今回は「モンスター」について語ります。
「モンスター」の作中では、桁違いのブスが整形手術をして世にも稀な美人になり、狂ってはいるものの、ある種「殉愛」よりも純愛なんじゃないか? というストーリーを展開します。
ここで注意書きをしておきますが、今回はちょいと半ネタバレな話も書くので、先が気になる方はこの先を読まないで下さい。
「作中のイカれた整形美人が迎えるハッピーエンドって何だろう?」って考えると、普通は昔恋をしていた人と一緒になるっていう結末だと思うんです。でも、それだと何か違う気もしますね。予防線かどうかは分かりませんけど、作中に出てきたヒーローは既婚者で、主人公の鈴原未帆は彼を弄び、破壊します。極悪人です。
そうなるとバッドエンドがこの作品には相応しいのかと思うのですが、その終り方がそこらの作品とはまた違う切り口になっているんですよね。
大体こういう整形モノって、例えばボトックスのやりすぎで能面みたいな顔になる等、手術のリバウンドで美貌を失うような因果応報的結末を迎える事が多い気がするんですが、そうはならないんですね。
半分結末をバラしたようなものですが(笑)、一応結果については伏せておきます。で、今作で思ったのは、実はこれ、ハッピーエンドなんじゃないか? と。
主人公の鈴原未帆にとって、その美しさを失うのは死ぬ事なんか問題じゃないぐらい辛い事だったと思うんです。過去に醜い容姿をしていたがために、彼女は色んな屈辱を味わい、色んなものを失ってきているわけですよ。
最後の最後で女の意地だけは守り通したところを見ると、何か「良かったね」と声を掛けたくなってしまう部分がなきにしもあらず……。
あの路線を進んでいた限りでは、これ以上ないくらい幸せな結末だったのではないかと思います。それ以上行けば、その先に待っているのは破滅しか無い事が分かっているからです。
随分昔の事ですが、小学校時代の教師が「俺は美しいまま死にたい」と自殺する若者が増えているという話をしたのを憶えています。当時の私は「なんじゃそりゃ」と思っていたのですが、一度ブラックすぎる環境に置かれた時は、なんとなしに「自暴自棄になって醜態を曝す前に、全てを終わらせてしまおう」とうっすら思った事をよく憶えています。その時に小学校時代の話を思い出したんですけどね。
絶対にマネしたくはないですけど、パーっと花火みたいに周囲を魅了して、そのまますぐ消えてしまう美しさに惹かれる心境自体はなんだか理解出来る気がします。ある種、シド・ヴィシャスやカート・コバーンに抱く憧憬と似たものがあるのかも。
鈴原未帆は、自分が花火として終われるよう、他者を魅了したまま終われるよう、知らぬ間に自分自身へ時限爆弾を仕掛けたのではないか? そんな事すら思うのです。
ブラックではありますが、狂人には狂人なりのハッピーエンドがあるという事ですね。
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