意外によく出来ていたカチコミ山
- 2023/04/26
- 01:03
いきなりですが、自分でも「これ、よく思いついたな」と思った一文があったので、だいぶ久しぶりに自作解題をしてみようかと。
扱う作品は「カチコミ山」ですね。
タイトル通り「カチカチ山」が元ネタの作品です。
ウサギがタヌキのところへトラックで突っ込み、サブマシンガンでタヌキ一味を皆殺しにする話ですね。
「カチコミ山」のラストには、こんなシーンがあります。
「憶えておけ」
激痛の走る口を無理くり動かして、呻くように言った。
「憶えておけ。これが、お前の親を殺した男の顔だ」
少年は目を見開いたまま、呆然と立ちつくしていた。
子供の足元にサブマシンガンを投げ捨てて、そのまま屋敷の正門へと歩いていく。
「俺を、殺せ」
激痛に耐えながら、最期の言葉を吐いた。もう人語を発しなくていいのかと思うとせいせいする。
撃ちやすいように、背中を向けて歩いた。そうだ。俺は子供相手に油断したんだ。
――これで、楽に逝ける。
だが、そんな淡い期待は叶えられる事もなく、俺は罰のように屋敷の門扉まで歩かないといけなかった。
これはタヌキ一味の子供に銃を渡したが、結局撃たれる事はなかったというくだりです。
この部分をちょっと解説してみます。
ウサギは世話になったおばあさんを殺されてタヌキのところにまで報復に行くのですが、タヌキ一味は漏れなく殺害していきます。
これはアウトローな作風もありますが、実際にやるかはどうかとして、家族を奪われたらこれぐらいやる人がいてもおかしくはないという一つの解答になるものかと思います。
当然ウサギはタヌキの生き残りに怨まれる事を理解しており、その流れから生き残った子供に「撃ちたきゃ撃てよ」と半ば捨て鉢な感覚で自身の生命を委ねるわけです。
ですが、子供は撃ちません。それは単に怖かっただけかもしれないし、ショックが大きすぎて報復しようという気にもならなかったのかもしれません。
理由はともあれ、銃弾がウサギを貫く事は無いわけです。
ここでウサギにとって計算外な事が起こるわけです。
大事な人を殺されたとはいえ、ウサギも「だからといって敵の家族を丸ごと殺して復讐を遂げればすべて良しというわけではない」という事は理解しているわけです。
だからこそ無意識的に報復の対価として、罪なき子供に自分を撃たせようとしたのです。
ですが、子供はウサギを撃ちません。
理由はどうあれ、ウサギは償いの機会を奪われました。
彼は罪を背負って、自分の足で歩いていかねばなりません。
その重みが「俺は罰のように屋敷の門扉まで歩かないといけなかった」というラストの一文に出ているわけです。
時には撃たない事が、報復をしない事が相手をこれ以上なく罰する事もある、という一例になっているかと思います。
そこまで深く読んでいる人が果たして1%でもいるのかと思いますが、そういう意味ではこの作品での「解答」は暗喩的に提示されているわけです。
正直、最後の最後で出てきた完全なる思いつきですが、明らかに天才ですね(笑)。
なんか思い出したので解説してみました。
というわけで4月27日から5月1日まで無料キャンペーンをやってみようと思います。
興味のある方はぜひ。
扱う作品は「カチコミ山」ですね。
タイトル通り「カチカチ山」が元ネタの作品です。
ウサギがタヌキのところへトラックで突っ込み、サブマシンガンでタヌキ一味を皆殺しにする話ですね。
「カチコミ山」のラストには、こんなシーンがあります。
「憶えておけ」
激痛の走る口を無理くり動かして、呻くように言った。
「憶えておけ。これが、お前の親を殺した男の顔だ」
少年は目を見開いたまま、呆然と立ちつくしていた。
子供の足元にサブマシンガンを投げ捨てて、そのまま屋敷の正門へと歩いていく。
「俺を、殺せ」
激痛に耐えながら、最期の言葉を吐いた。もう人語を発しなくていいのかと思うとせいせいする。
撃ちやすいように、背中を向けて歩いた。そうだ。俺は子供相手に油断したんだ。
――これで、楽に逝ける。
だが、そんな淡い期待は叶えられる事もなく、俺は罰のように屋敷の門扉まで歩かないといけなかった。
これはタヌキ一味の子供に銃を渡したが、結局撃たれる事はなかったというくだりです。
この部分をちょっと解説してみます。
ウサギは世話になったおばあさんを殺されてタヌキのところにまで報復に行くのですが、タヌキ一味は漏れなく殺害していきます。
これはアウトローな作風もありますが、実際にやるかはどうかとして、家族を奪われたらこれぐらいやる人がいてもおかしくはないという一つの解答になるものかと思います。
当然ウサギはタヌキの生き残りに怨まれる事を理解しており、その流れから生き残った子供に「撃ちたきゃ撃てよ」と半ば捨て鉢な感覚で自身の生命を委ねるわけです。
ですが、子供は撃ちません。それは単に怖かっただけかもしれないし、ショックが大きすぎて報復しようという気にもならなかったのかもしれません。
理由はともあれ、銃弾がウサギを貫く事は無いわけです。
ここでウサギにとって計算外な事が起こるわけです。
大事な人を殺されたとはいえ、ウサギも「だからといって敵の家族を丸ごと殺して復讐を遂げればすべて良しというわけではない」という事は理解しているわけです。
だからこそ無意識的に報復の対価として、罪なき子供に自分を撃たせようとしたのです。
ですが、子供はウサギを撃ちません。
理由はどうあれ、ウサギは償いの機会を奪われました。
彼は罪を背負って、自分の足で歩いていかねばなりません。
その重みが「俺は罰のように屋敷の門扉まで歩かないといけなかった」というラストの一文に出ているわけです。
時には撃たない事が、報復をしない事が相手をこれ以上なく罰する事もある、という一例になっているかと思います。
そこまで深く読んでいる人が果たして1%でもいるのかと思いますが、そういう意味ではこの作品での「解答」は暗喩的に提示されているわけです。
正直、最後の最後で出てきた完全なる思いつきですが、明らかに天才ですね(笑)。
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