新作の断片
- 2023/01/05
- 16:48
風を切り裂く音とともに、右のオーバーハンドフックが飛んでくる。
顔を逸らしてかわす。不細工なスリッピングアウェー。観客に風を切る音が聞こえたのか、時間差でどよめきが起こる。誰の目に見ても、この一撃をもらったらタダでは済まないと分かる。
五條は表情もなく、ぎらついた目で小幡を観察している。距離感の修正でも脳内でしているのかもしれない。
こんな一撃をもらったらたまったものではない。
すぐに脚を使い、左を打ちながら距離を取る。ブーイング。レフリーが「ボックス! ボックス!」とファイトをけしかける。会場全体が小幡を煽っていた。
モニターには「wwwwww」とバカにするような弾幕が流れ、五條と一緒になって小幡に揺さぶりをかけている。これほど不公平な興行を聞いた事が無い。
どれだけ揺さぶられようが、五條と正面から殴り合うのは無謀だ。小幡のパンチも強い方だが、五條のパンチ力は規格外だ。三階級上ぐらいの選手でも楽にノックアウト出来るだけの破壊力がある。
ステップを踏み、ジャブを伸ばす。観客が野次る。「勝負しろ、卑怯者!」と正論まがいの野次で正面から闘わせようとしてくる。軽い地獄絵図だった。
五條がプレッシャーをかけ、距離を詰めて来る。
脚を使っては逃げきれないと、ガードを固めてくっついた。
スピードを重視して、左フックから左ボディー、それからアッパーへと繋ぐ。いくらか当たったが、五條はビクともしない。
右の強打をガード上から叩く。刹那、五條の右オーバーハンドが迫る。
ガードで防いだ。反撃へ繋ぐ――そう思った時、足に力が入らなくなった。
――効かされた?
ガードの上から叩いたにも関わらず、五條の一撃でたたらを踏んだ。
おぼつかない足元。まずい――
そう思った時には、めいいっぱいの力で放たれる左フックが迫っていた。
――ガード。
咄嗟に脳内で響いた言葉。
衝撃。真っ暗な視界の中に電気が走ったような光景。
気付けば小幡は尻餅をついていた。
顔を逸らしてかわす。不細工なスリッピングアウェー。観客に風を切る音が聞こえたのか、時間差でどよめきが起こる。誰の目に見ても、この一撃をもらったらタダでは済まないと分かる。
五條は表情もなく、ぎらついた目で小幡を観察している。距離感の修正でも脳内でしているのかもしれない。
こんな一撃をもらったらたまったものではない。
すぐに脚を使い、左を打ちながら距離を取る。ブーイング。レフリーが「ボックス! ボックス!」とファイトをけしかける。会場全体が小幡を煽っていた。
モニターには「wwwwww」とバカにするような弾幕が流れ、五條と一緒になって小幡に揺さぶりをかけている。これほど不公平な興行を聞いた事が無い。
どれだけ揺さぶられようが、五條と正面から殴り合うのは無謀だ。小幡のパンチも強い方だが、五條のパンチ力は規格外だ。三階級上ぐらいの選手でも楽にノックアウト出来るだけの破壊力がある。
ステップを踏み、ジャブを伸ばす。観客が野次る。「勝負しろ、卑怯者!」と正論まがいの野次で正面から闘わせようとしてくる。軽い地獄絵図だった。
五條がプレッシャーをかけ、距離を詰めて来る。
脚を使っては逃げきれないと、ガードを固めてくっついた。
スピードを重視して、左フックから左ボディー、それからアッパーへと繋ぐ。いくらか当たったが、五條はビクともしない。
右の強打をガード上から叩く。刹那、五條の右オーバーハンドが迫る。
ガードで防いだ。反撃へ繋ぐ――そう思った時、足に力が入らなくなった。
――効かされた?
ガードの上から叩いたにも関わらず、五條の一撃でたたらを踏んだ。
おぼつかない足元。まずい――
そう思った時には、めいいっぱいの力で放たれる左フックが迫っていた。
――ガード。
咄嗟に脳内で響いた言葉。
衝撃。真っ暗な視界の中に電気が走ったような光景。
気付けば小幡は尻餅をついていた。
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