新作の断片
- 2022/10/07
- 01:08
大迫の指導するボクシングが影も形も無くなっていた。小幡はバックステップで攻撃を外し、すぐに素早く踏み込んでカウンターを打ち込む縦系の動きに戻った。ガードは緩く、身体を軟体動物のように動かして攻撃を外す。
スウェーバックしながらのアッパー。大迫が大嫌いでやれば絞首刑にされかねない禁断の技――小幡は自由に伸び伸びと、大迫の指導を完全に無視するような闘い方をしていた。
大迫は視界から消した。見たくないものをミュートモードで消せるようにした。あんな辛気臭い顔を見せられたら士気が下がる。
小幡は誰にも縛られずに闘い、大迫の育てた選手を無残に切り裂いていった。リング上の戦略や駆け引きがそれほどでなくとも、小幡には驚異的なスピードがあった。それはハンドスピードでもあったし、全身を動かす敏捷性でも発揮された。
攻撃そのものは縦系で一見ワンパターンに見えるが、間合いの取り方やタイミングでフェンシングのような美しさをところどころで垣間見せた。
大迫が当てつけにぶつけたA級ボクサーでも、小幡のスピードにはついて行けず圧倒される事が多くなった。それでも大迫は断じて小幡を認めなかった。小幡も大迫を師とは認めなかった。二人の仲は本当に最悪の状態だった。
スウェーバックしながらのアッパー。大迫が大嫌いでやれば絞首刑にされかねない禁断の技――小幡は自由に伸び伸びと、大迫の指導を完全に無視するような闘い方をしていた。
大迫は視界から消した。見たくないものをミュートモードで消せるようにした。あんな辛気臭い顔を見せられたら士気が下がる。
小幡は誰にも縛られずに闘い、大迫の育てた選手を無残に切り裂いていった。リング上の戦略や駆け引きがそれほどでなくとも、小幡には驚異的なスピードがあった。それはハンドスピードでもあったし、全身を動かす敏捷性でも発揮された。
攻撃そのものは縦系で一見ワンパターンに見えるが、間合いの取り方やタイミングでフェンシングのような美しさをところどころで垣間見せた。
大迫が当てつけにぶつけたA級ボクサーでも、小幡のスピードにはついて行けず圧倒される事が多くなった。それでも大迫は断じて小幡を認めなかった。小幡も大迫を師とは認めなかった。二人の仲は本当に最悪の状態だった。
スポンサーサイト