新作の断片
- 2022/09/19
- 16:25
闘いを通じてのメッセージはシンプルだった――お前は間違えている。
大迫自身もこのかなり遠回しな当てこすりに気付いていた。
たしかに小幡は大迫の教えには一切抵触していない。だが、見せつけるようにつまらない試合を平然とやってのける。やろうと思えば倒せるのに、少しもその気配を見せない。
スパーリングでも「手を出せ」と怒鳴ると、十秒だけ従い、あとは流す。指示に従ってはいるので、これ以上どやす事も出来ない。その才能を十二分にも伸ばしてやろうとしていたのに、その意気をバカにされた気分となった。
二人の仲は最悪だった。大迫は小幡のミットを持つ事もせず、練習生を相手にディフェンスの練習をさせた。「お前などそのレベルだ」という言外のメッセージだった。
小幡はプロとのスパーリングではやる気がないくせに、練習生に胸を貸す役割という「冷や飯」を食わされると、ほぼ必ず「うっかり」三十秒以内に倒した。わざとじゃないと言った。絶対にわざとだった。二人の関係はますます冷え切っていった。誰もこの二人の不仲に巻き込まれたくなかった。お互いがもはや何を目指しているのか、自分でも分からなくなっていた。
大迫自身もこのかなり遠回しな当てこすりに気付いていた。
たしかに小幡は大迫の教えには一切抵触していない。だが、見せつけるようにつまらない試合を平然とやってのける。やろうと思えば倒せるのに、少しもその気配を見せない。
スパーリングでも「手を出せ」と怒鳴ると、十秒だけ従い、あとは流す。指示に従ってはいるので、これ以上どやす事も出来ない。その才能を十二分にも伸ばしてやろうとしていたのに、その意気をバカにされた気分となった。
二人の仲は最悪だった。大迫は小幡のミットを持つ事もせず、練習生を相手にディフェンスの練習をさせた。「お前などそのレベルだ」という言外のメッセージだった。
小幡はプロとのスパーリングではやる気がないくせに、練習生に胸を貸す役割という「冷や飯」を食わされると、ほぼ必ず「うっかり」三十秒以内に倒した。わざとじゃないと言った。絶対にわざとだった。二人の関係はますます冷え切っていった。誰もこの二人の不仲に巻き込まれたくなかった。お互いがもはや何を目指しているのか、自分でも分からなくなっていた。
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