薬丸岳「誓約」書評
- 2021/10/16
- 00:29
薬丸岳の「誓約」を読みました。
以前にWOWOWでもドラマになった「悪党」が面白かったのもあり、書店で目に留まったのを機にすぐ手に取りました。
あらすじを紹介します。
主人公である向井聡は妻と娘と一緒に暮らしつつ、落合というパートナーと共同経営でバーのオーナーを務めています。
派手な暮らしではありませんが、地道にコツコツと生きる、どちらかというと幸せな家庭に類する生活を送っています。
そんな折、向井のもとには差出人の名前が無い手紙が届きます。
「あの男たちは刑務所から出ています」
それを機に、幸せだったはずの向井の人生は急展開を迎えます。
顔の見えない脅迫者。死んだはずの「彼女」。そして、彼女とした誰にも言えない誓約……。
一見幸せに見える向井には、ある後ろ暗い過去があり……。
というお話ですね。
薬丸岳の作品を読んでいる人には馴染み深いと思いますが、彼は一貫して「罪は赦されるのか」という命題をもとに小説を書き続けています。まるで、それ自体が著者の告解でありセラピーでもあるように。
人は善である
急に何を言い出すのだと言われるかもしれませんが、人は本質的に善です。
なぜかは端折ります。私はしょうもない学術的な技術論争に巻き込まれるつもりはございません。
人は自分が悪であると認識したときに惨めさを感じ、その度合いによって自らを罰しはじめます。俗にいう因果応報というやつかもしれませんが、その違いは「彼は彼自身を罰する」という事です。
人は正しくいなければいけません。そうなると自分が何か悪事を行った時、それを正当化します。「あれは正しかった」と言うのです。
ですが、本質的に彼は自分が成した悪を知っているので、知らず知らずに自分を罰しはじめます。その「手法」は病気になったり、極端に不幸を引き寄せたりと様々です。
本作の向井も自分の罪と向き合うために、ありとあらゆる不幸や試練を自分に課します。
その本質に彼が本能的に気付いた時、目の前には「知らぬ間に」道が出来ます。
本作では「罪は赦されるのか」といったテーマとともに、「どうやってそれを償うのか」といった人間の待つ永遠のテーマについて物語という切り口で読者へと(出来たら向き合いたくない)難問を投げかけているのだと思います。
悪い事をしてはいけないのは当たり前です。ですが、実際にやってしまった事に対しては何をすれば償えるのか……?
誰もが避けたがり、それでいて答えを欲しがる難問に、本作は一つの解答を出しているのだと思います。
あなたならどうしますか?
あえてこの質問でこの書評の掉尾を飾りたいと思います。
薬丸岳の小説とは、大人になったら学ぶ事の出来る道徳の授業なのかもしれません。
こちらもよろしく!
以前にWOWOWでもドラマになった「悪党」が面白かったのもあり、書店で目に留まったのを機にすぐ手に取りました。
あらすじを紹介します。
主人公である向井聡は妻と娘と一緒に暮らしつつ、落合というパートナーと共同経営でバーのオーナーを務めています。
派手な暮らしではありませんが、地道にコツコツと生きる、どちらかというと幸せな家庭に類する生活を送っています。
そんな折、向井のもとには差出人の名前が無い手紙が届きます。
「あの男たちは刑務所から出ています」
それを機に、幸せだったはずの向井の人生は急展開を迎えます。
顔の見えない脅迫者。死んだはずの「彼女」。そして、彼女とした誰にも言えない誓約……。
一見幸せに見える向井には、ある後ろ暗い過去があり……。
というお話ですね。
薬丸岳の作品を読んでいる人には馴染み深いと思いますが、彼は一貫して「罪は赦されるのか」という命題をもとに小説を書き続けています。まるで、それ自体が著者の告解でありセラピーでもあるように。
人は善である
急に何を言い出すのだと言われるかもしれませんが、人は本質的に善です。
なぜかは端折ります。私はしょうもない学術的な技術論争に巻き込まれるつもりはございません。
人は自分が悪であると認識したときに惨めさを感じ、その度合いによって自らを罰しはじめます。俗にいう因果応報というやつかもしれませんが、その違いは「彼は彼自身を罰する」という事です。
人は正しくいなければいけません。そうなると自分が何か悪事を行った時、それを正当化します。「あれは正しかった」と言うのです。
ですが、本質的に彼は自分が成した悪を知っているので、知らず知らずに自分を罰しはじめます。その「手法」は病気になったり、極端に不幸を引き寄せたりと様々です。
本作の向井も自分の罪と向き合うために、ありとあらゆる不幸や試練を自分に課します。
その本質に彼が本能的に気付いた時、目の前には「知らぬ間に」道が出来ます。
本作では「罪は赦されるのか」といったテーマとともに、「どうやってそれを償うのか」といった人間の待つ永遠のテーマについて物語という切り口で読者へと(出来たら向き合いたくない)難問を投げかけているのだと思います。
悪い事をしてはいけないのは当たり前です。ですが、実際にやってしまった事に対しては何をすれば償えるのか……?
誰もが避けたがり、それでいて答えを欲しがる難問に、本作は一つの解答を出しているのだと思います。
あなたならどうしますか?
あえてこの質問でこの書評の掉尾を飾りたいと思います。
薬丸岳の小説とは、大人になったら学ぶ事の出来る道徳の授業なのかもしれません。
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