牛野小雪「ペンギンと太陽」書評
- 2021/10/13
- 01:12
久しぶりに牛野小雪氏が新作を出しました。
「ペンギンと太陽」――あらすじが……非常に書きにくい(笑)。いっそ省略します。
冒頭で「本文中で気に入った、あるいは何かをひらめいた言葉やフレーズを発見すれば、読書を中断してtwitterにその部分を書き込むことをおすすめします」という不敵な提案がありました。
それもあり、今作は氏にとって実験小説でもあるのかなという印象を受けました。
かねてから氏はまったく関係ない文章を物語にするといったアイディアをブログに書いていた気がしますが、おそらく本作の事でしょう。本作にはところどころに「おや」と思わせるフレーズがあり、どれに惹かれるかは人それぞれかと。
ちなみに個人的に好きなくだりは「君は人間のふりをした火星のペンギン……と見せかけて、本当は人間なんだろう?」というところでしょうか。なんとなしに不思議の国のアリスを思い出す無茶苦茶さというか(笑)。いかれ帽子が眼に浮かびました。
ただ、単に閃きだけでなく、要所要所に無茶な展開や急激な変化を取り入れつつも、物語としては成立させるバランスがある。このあたりは明らかに感性によるものですね。
不吉なラストは牛野氏らしい唐突さと、出どころ不明の不安感、寂しさ、そしてその先を考える余白を与える内容になっています。このラストは本人も好きなのでは? と思っています。
ただ、幾ばくか不安なのは晩年の芥川めいた厭世観というか、放っておいたらこの人「I can fly」とか言いながら自殺しちゃうんじゃないかと思ったりもするのです。書いていて気づきましたが言いようのない不安はその匂いを嗅ぎ取ったからなのかもしれないですね。お願いだから死なないでね。
と、色々実験しつつも、おそらく氏の頭には次に書くものがぼんやりとあって、その布石として本作が書かれたような気がしてならないのです。
次に書く小説でものすごく不吉な平凡さというか、何ら変わらない日常へナチュラルに毒を潜ませる作品が出てきそうな、そんな気がするのです。
量としては大した事はないので、気軽に手に取ってみたらいいのではないでしょうか。
「ペンギンと太陽」――あらすじが……非常に書きにくい(笑)。いっそ省略します。
冒頭で「本文中で気に入った、あるいは何かをひらめいた言葉やフレーズを発見すれば、読書を中断してtwitterにその部分を書き込むことをおすすめします」という不敵な提案がありました。
それもあり、今作は氏にとって実験小説でもあるのかなという印象を受けました。
かねてから氏はまったく関係ない文章を物語にするといったアイディアをブログに書いていた気がしますが、おそらく本作の事でしょう。本作にはところどころに「おや」と思わせるフレーズがあり、どれに惹かれるかは人それぞれかと。
ちなみに個人的に好きなくだりは「君は人間のふりをした火星のペンギン……と見せかけて、本当は人間なんだろう?」というところでしょうか。なんとなしに不思議の国のアリスを思い出す無茶苦茶さというか(笑)。いかれ帽子が眼に浮かびました。
ただ、単に閃きだけでなく、要所要所に無茶な展開や急激な変化を取り入れつつも、物語としては成立させるバランスがある。このあたりは明らかに感性によるものですね。
不吉なラストは牛野氏らしい唐突さと、出どころ不明の不安感、寂しさ、そしてその先を考える余白を与える内容になっています。このラストは本人も好きなのでは? と思っています。
ただ、幾ばくか不安なのは晩年の芥川めいた厭世観というか、放っておいたらこの人「I can fly」とか言いながら自殺しちゃうんじゃないかと思ったりもするのです。書いていて気づきましたが言いようのない不安はその匂いを嗅ぎ取ったからなのかもしれないですね。お願いだから死なないでね。
と、色々実験しつつも、おそらく氏の頭には次に書くものがぼんやりとあって、その布石として本作が書かれたような気がしてならないのです。
次に書く小説でものすごく不吉な平凡さというか、何ら変わらない日常へナチュラルに毒を潜ませる作品が出てきそうな、そんな気がするのです。
量としては大した事はないので、気軽に手に取ってみたらいいのではないでしょうか。
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