新作の断片
- 2021/06/25
- 01:03
窓の外を見ると、時間差で黒い煙が上がって来る。ボヤで済みそうな感じではなかった。
「どういう事? なにをどうしたら学校がこんな燃え方をするの?」
隣に立つ骸(むくろ)が軽く舌打ちをする。
「ファイヤーマンか」
「なに?」
「織井兄弟一味のしわざだ」
聞いた事がある。織井兄弟一味の中には放火で一区画の街を火に沈めた狂人がいると。その男は文字通りファイヤーマンと呼ばれるようになった。悪い冗談にしか聞こえなかったが、もはやこの魔窟でどんな奴が出てこようが驚いている場合じゃない。
ヘルブラザーズはとうとう異分子を排除するために放火にまで手を染めたらしい。
燃えゆく校舎。本能寺のようだった。他の生徒ごと丸焼きにする作戦みたいだ。
「逃げるぞ」
「うん」
骸が麗奈の手を引いて燃え盛る校舎を駆け抜ける。骸の顔を見上げる。炎に照らされる極悪な人相。王子様とは程遠かった。
頬が熱くなる。それが火災のせいなのか、骸と手を繋いでいるせいなのかは分からない。不謹慎にも、この時がずっと続けばいいのに、と思った。
だが、骸が向かっているのはまたしても屋上のようだった。もう嫌な予感しかしない。屋上には大抵ろくでもないバケモノが待っている。なぜこいつらは揃いも揃って屋上へと行きたがるのか。
そんな思いも知らず、女子の手を引くのが面倒になった骸は、断りもなく麗奈を抱きかかえた。
一気に屋上への階段を駆け上がる。嫌だ。
そう思えば思うほど、骸の走る速度は増していくように思えた。
夕暮れに染まる屋上。陽が沈みかけている。完全なる惨劇フラグ。沈みゆく陽に照らされる人影があった。
「それ」はこのクソ暑いのに灰色の防護服を着ていて、ガスマスクをした顔からはダースベイダーのように空気の排出される音が響いている。背中にはやたらと大きなタンクを背負っていて、そのタンクにはバキュームのような形状をしたホースがついていた。
「またヤバいやつが出てきた」
麗奈の口から本音が漏れる。
もうヤバいという域ですら凌駕しているのかもしれない。
目の前の男は、誰が見てもフルスイングの不審者だった。
「どういう事? なにをどうしたら学校がこんな燃え方をするの?」
隣に立つ骸(むくろ)が軽く舌打ちをする。
「ファイヤーマンか」
「なに?」
「織井兄弟一味のしわざだ」
聞いた事がある。織井兄弟一味の中には放火で一区画の街を火に沈めた狂人がいると。その男は文字通りファイヤーマンと呼ばれるようになった。悪い冗談にしか聞こえなかったが、もはやこの魔窟でどんな奴が出てこようが驚いている場合じゃない。
ヘルブラザーズはとうとう異分子を排除するために放火にまで手を染めたらしい。
燃えゆく校舎。本能寺のようだった。他の生徒ごと丸焼きにする作戦みたいだ。
「逃げるぞ」
「うん」
骸が麗奈の手を引いて燃え盛る校舎を駆け抜ける。骸の顔を見上げる。炎に照らされる極悪な人相。王子様とは程遠かった。
頬が熱くなる。それが火災のせいなのか、骸と手を繋いでいるせいなのかは分からない。不謹慎にも、この時がずっと続けばいいのに、と思った。
だが、骸が向かっているのはまたしても屋上のようだった。もう嫌な予感しかしない。屋上には大抵ろくでもないバケモノが待っている。なぜこいつらは揃いも揃って屋上へと行きたがるのか。
そんな思いも知らず、女子の手を引くのが面倒になった骸は、断りもなく麗奈を抱きかかえた。
一気に屋上への階段を駆け上がる。嫌だ。
そう思えば思うほど、骸の走る速度は増していくように思えた。
夕暮れに染まる屋上。陽が沈みかけている。完全なる惨劇フラグ。沈みゆく陽に照らされる人影があった。
「それ」はこのクソ暑いのに灰色の防護服を着ていて、ガスマスクをした顔からはダースベイダーのように空気の排出される音が響いている。背中にはやたらと大きなタンクを背負っていて、そのタンクにはバキュームのような形状をしたホースがついていた。
「またヤバいやつが出てきた」
麗奈の口から本音が漏れる。
もうヤバいという域ですら凌駕しているのかもしれない。
目の前の男は、誰が見てもフルスイングの不審者だった。
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