出すか出さないか微妙な新作の断片
- 2021/04/13
- 02:00
――紫乃です。
ここまで来るともうホラーだった。
思い出のままだったらいつまでも愛しい恋人だったはずなのに。
なぜだ?
なぜあんたはこのタイミングで出てきた?
恐怖に顫える。息遣いがまた荒くなり、この先の未来が脳裏をよぎると寒気がした。
コメントを削除する。
顫える指。唇。膝。つまるところガクブル。
彼女の存在が嫁にバレたらどうなる?
こ ろ さ れ る ☆
当たり前だ。
それ以外の何があるというのだ?
頼む。本当に頼む。
思い出は思い出のまま眠っていてくれ。
一生に一度のお願いだ。本当に心から頼む。
その日の動揺はすさまじかった。
出勤で自家用車を運転した俺は、信号を間違えるわ人の存在に気付かずあわや轢き殺しそうになるわで散々だった。まだ酒に酔って運転している方がマシな部類だったと思う。
会社の仕事でもミスを連発した。書類の数字を読み間違えて報告したり、年度末の売上の着地予想も頓珍漢な回答をメールで送信してしまい、赤っ恥をかいた。
事務の女性職員から「今日なんか疲れてます?」と訊かれる始末。かわいい女子社員の出したコーヒーを呑んでも、意識は冴えわたるばかりか混濁を極める一方だった。
なんとか無事故で家に帰るも、嫁からは「今日は何か大変なことでもあったの?」と訊かれた。実際その通りなのだが「はいそうです」とも言えずに洗面所で顔を洗った。
ひどい顔だった。
食事をすると、さっさと眠ることにした。
これが夢落ちだったらどんなに良かったことか。
目覚めると、スマホに届いたFaithbookのメッセージをチェックする。
――紫乃です。
神よ、あなたは私を赦す気が無いのですか?
ここまで来るともうホラーだった。
思い出のままだったらいつまでも愛しい恋人だったはずなのに。
なぜだ?
なぜあんたはこのタイミングで出てきた?
恐怖に顫える。息遣いがまた荒くなり、この先の未来が脳裏をよぎると寒気がした。
コメントを削除する。
顫える指。唇。膝。つまるところガクブル。
彼女の存在が嫁にバレたらどうなる?
こ ろ さ れ る ☆
当たり前だ。
それ以外の何があるというのだ?
頼む。本当に頼む。
思い出は思い出のまま眠っていてくれ。
一生に一度のお願いだ。本当に心から頼む。
その日の動揺はすさまじかった。
出勤で自家用車を運転した俺は、信号を間違えるわ人の存在に気付かずあわや轢き殺しそうになるわで散々だった。まだ酒に酔って運転している方がマシな部類だったと思う。
会社の仕事でもミスを連発した。書類の数字を読み間違えて報告したり、年度末の売上の着地予想も頓珍漢な回答をメールで送信してしまい、赤っ恥をかいた。
事務の女性職員から「今日なんか疲れてます?」と訊かれる始末。かわいい女子社員の出したコーヒーを呑んでも、意識は冴えわたるばかりか混濁を極める一方だった。
なんとか無事故で家に帰るも、嫁からは「今日は何か大変なことでもあったの?」と訊かれた。実際その通りなのだが「はいそうです」とも言えずに洗面所で顔を洗った。
ひどい顔だった。
食事をすると、さっさと眠ることにした。
これが夢落ちだったらどんなに良かったことか。
目覚めると、スマホに届いたFaithbookのメッセージをチェックする。
――紫乃です。
神よ、あなたは私を赦す気が無いのですか?
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