出すか出さないか微妙な新作の断片
- 2021/04/07
- 01:21
「おめでとう。この年で所長なんて異例だぞ。私も鼻が高いよ」
にこやかに笑う上司。周囲から注がれる羨望の目。
だけど俺は少しも幸せじゃなかった。
――栄転。彼女に会ってから驚異的な勢いで個人的な業績を伸ばした俺は、その実力を認められて他県の営業所長に任命された。会社史上でも指折りの出世らしい。
だが、同時にそれは彼女との別れも意味していた。
遊びのはずだった。
たかだか「練習台」のはずの女だった。
なら、どうしてここまで苦しい?
胸の奥に居座る鈍い痛み。ピリオドの見えてきた甘い日々を惜しむような舌にじんわりと残る苦み。複雑を画に描いたような相克が、この胸の中で渦巻いていた。
にこやかに笑う上司。周囲から注がれる羨望の目。
だけど俺は少しも幸せじゃなかった。
――栄転。彼女に会ってから驚異的な勢いで個人的な業績を伸ばした俺は、その実力を認められて他県の営業所長に任命された。会社史上でも指折りの出世らしい。
だが、同時にそれは彼女との別れも意味していた。
遊びのはずだった。
たかだか「練習台」のはずの女だった。
なら、どうしてここまで苦しい?
胸の奥に居座る鈍い痛み。ピリオドの見えてきた甘い日々を惜しむような舌にじんわりと残る苦み。複雑を画に描いたような相克が、この胸の中で渦巻いていた。
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