新作の断片
- 2020/08/28
- 01:05
ガードを固めて、隙間から様子を窺う。今はダメージのせいで脚も利かなくなっている。下手にフットワークを使えばバランスを崩して自爆する形になりかねない。ならばガードを固めて、打ち終わりに大振りのパンチを振るっていくしかない。
薄れかけた意識の中、最善の策を選択していく。
華原がキャンバスを滑るように移動し、スイスイと間合いに入り込んでくる。亀のようになった黒崎へ、容赦の無い連打を浴びせかける。金属の入った左拳は黒崎の肉を打ち、カミソリの入った右拳は血塗れの身体を切り裂いていく。血が噴き出し、虫かごの床を紅く染めていく。
歯を食いしばる。激痛と、血の匂い。口の中へと広がっていく。足元がフラつく。苦し紛れにリターンの左フックを振る。かわされて、左ボディーを突き刺された。
血を吐いた。呻き、後ずさる。嗤わない華原。不気味な静寂。残酷な観客が、目の前の光景に戦慄していた。ここが、殺人現場になるという一種の確信を得たようだった。
構えようとする。腕が上がらない。打たれて、切り裂かれて、感覚が麻痺している。身体を半身にする事さえ億劫だった。
――来いよ。
精一杯の強がり。蚊の鳴くような声。空気に溶けて消えた。
薄れかけた意識の中、最善の策を選択していく。
華原がキャンバスを滑るように移動し、スイスイと間合いに入り込んでくる。亀のようになった黒崎へ、容赦の無い連打を浴びせかける。金属の入った左拳は黒崎の肉を打ち、カミソリの入った右拳は血塗れの身体を切り裂いていく。血が噴き出し、虫かごの床を紅く染めていく。
歯を食いしばる。激痛と、血の匂い。口の中へと広がっていく。足元がフラつく。苦し紛れにリターンの左フックを振る。かわされて、左ボディーを突き刺された。
血を吐いた。呻き、後ずさる。嗤わない華原。不気味な静寂。残酷な観客が、目の前の光景に戦慄していた。ここが、殺人現場になるという一種の確信を得たようだった。
構えようとする。腕が上がらない。打たれて、切り裂かれて、感覚が麻痺している。身体を半身にする事さえ億劫だった。
――来いよ。
精一杯の強がり。蚊の鳴くような声。空気に溶けて消えた。
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