「掃除屋 プロレス始末伝」書評
- 2019/12/13
- 17:00
以前からAmazonよりオススメのメールが来ており、気になっていた作品を購入しました。
その名も「掃除屋 プロレス始末伝」というものなのですが、これは文字通りプロレスを描いた小説であります。
ストーリーを簡単に説明すると、とうに盛りを過ぎたベテランレスラーピューマ藤戸という選手がいまして、この人は「掃除屋(クリーナー)」という異名を持っています。
それは業界を荒らす外国人レスラーや荒ぶる若造にリングで制裁を加えるというなかなか恐ろしい存在でして、試合には負けるのですが気付いたら勝ったはずの対戦相手は再起不能の傷を負っていたり、試合で追った負傷が原因で長期欠場を余儀なくされたりします。
前述の通り、その「事故」はクライアントから制裁の指令を受けた藤戸が計算ずくでやっているのですが、一見殺し屋めいたダーティーファイターには別の顔がありました。
それはかつて自分が再起不能にした鷹沢選手のもとへ通い、いまだ意識の戻らない彼の治療費を払い続けていく贖罪者のような顔でした。
闘いを続けるごとに身体は軋み、いよいよ限界が近付いてきます。
そんな中、藤戸の前には次々と試練が……というお話ですね。
この小説でまずすげえなと思ったのは、プロレスを小説にしてしまうところですかね。
今更隠す必要もありませんが、プロレスは基本的に勝敗が決まっておりまして、そういった題材を虚構の中で表現しようとすると非常に難しいのです。だって、どっちが勝つのか明らかなのに、その中で緊張感を出すってものすごく難しいじゃないですか。
そうなると事前の「取り決め」が分からないように三人称視点で書くとか工夫が必要になるんですけど、本作はなんと一人称。藤戸の視点で物語は描かれていきます。
少し話は脱線しますが、私も自著の「KY」では「名ばかり」プロレスのくだりは書きました。ですが、あれは「プロレスという名目ではあるけど実際にあるのは上司と部下の間で行われるガチの殺し合いですよ」というニュアンスで書いていました。つまり、ヤラセではない(笑)。
ですが本作ではあらかじめ決まった結末の試合に予定調和臭が漂っていない。
それでいて実際の試合シーンは緊張感があり、舞台設定も含めてプロレスに対する愛をものすごく感じました。この団体は新日本だろうなとか」、これは闘魂三銃士が元ネタだろうなとか、そんな楽しみもありました。
何よりも特筆すべきはプロレスラー藤戸が油ののった若武者に正面から突っ込んでいくバカ野郎ぶりですね。こんな青臭い事が出来るオッサンにみんな実はなりたいんじゃないかと、胸が熱くなりましたね。
おそらくそんなにプロレスに詳しくない人でも十分に楽しめると思うので、熱い魂、燃える男の生きざまを紙面を通してしっかりと感じ取っていただきたいと思います。
さすがAmazon。私の好みを分かっていらっしゃる(笑)。
その名も「掃除屋 プロレス始末伝」というものなのですが、これは文字通りプロレスを描いた小説であります。
ストーリーを簡単に説明すると、とうに盛りを過ぎたベテランレスラーピューマ藤戸という選手がいまして、この人は「掃除屋(クリーナー)」という異名を持っています。
それは業界を荒らす外国人レスラーや荒ぶる若造にリングで制裁を加えるというなかなか恐ろしい存在でして、試合には負けるのですが気付いたら勝ったはずの対戦相手は再起不能の傷を負っていたり、試合で追った負傷が原因で長期欠場を余儀なくされたりします。
前述の通り、その「事故」はクライアントから制裁の指令を受けた藤戸が計算ずくでやっているのですが、一見殺し屋めいたダーティーファイターには別の顔がありました。
それはかつて自分が再起不能にした鷹沢選手のもとへ通い、いまだ意識の戻らない彼の治療費を払い続けていく贖罪者のような顔でした。
闘いを続けるごとに身体は軋み、いよいよ限界が近付いてきます。
そんな中、藤戸の前には次々と試練が……というお話ですね。
この小説でまずすげえなと思ったのは、プロレスを小説にしてしまうところですかね。
今更隠す必要もありませんが、プロレスは基本的に勝敗が決まっておりまして、そういった題材を虚構の中で表現しようとすると非常に難しいのです。だって、どっちが勝つのか明らかなのに、その中で緊張感を出すってものすごく難しいじゃないですか。
そうなると事前の「取り決め」が分からないように三人称視点で書くとか工夫が必要になるんですけど、本作はなんと一人称。藤戸の視点で物語は描かれていきます。
少し話は脱線しますが、私も自著の「KY」では「名ばかり」プロレスのくだりは書きました。ですが、あれは「プロレスという名目ではあるけど実際にあるのは上司と部下の間で行われるガチの殺し合いですよ」というニュアンスで書いていました。つまり、ヤラセではない(笑)。
ですが本作ではあらかじめ決まった結末の試合に予定調和臭が漂っていない。
それでいて実際の試合シーンは緊張感があり、舞台設定も含めてプロレスに対する愛をものすごく感じました。この団体は新日本だろうなとか」、これは闘魂三銃士が元ネタだろうなとか、そんな楽しみもありました。
何よりも特筆すべきはプロレスラー藤戸が油ののった若武者に正面から突っ込んでいくバカ野郎ぶりですね。こんな青臭い事が出来るオッサンにみんな実はなりたいんじゃないかと、胸が熱くなりましたね。
おそらくそんなにプロレスに詳しくない人でも十分に楽しめると思うので、熱い魂、燃える男の生きざまを紙面を通してしっかりと感じ取っていただきたいと思います。
さすがAmazon。私の好みを分かっていらっしゃる(笑)。
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