善と悪
- 2019/01/04
- 17:00
こんにちは。魔王です。
……いや、それではいくらなんでも説明を端折り過ぎですか。
もう想像はついているかもしれませんが、巨大タコの身体で魔王に闘いを挑んだわたくしは、見事に地獄の業火で焼かれました。
笑えるぐらいアッサリと焼き殺されたわたくしではございますが、いつもの如く自分を倒した敵の身体を乗っ取る能力を発揮して、まさかのラスボスを乗っ取るという暴挙に成功したのであります。
幸い魔王の肉体は大きなツノが二本ついている以外は人型のものでしたので、この身体なら人間の女とも自由にセックスが出来ます。
というわけで、わたくしは日々人間界にいる女性を移動呪文で呼び出してはセックスして送り返すという日々を繰り返しています。配下の魔物がどう思っているかは知りませんが、逆らう者は皆殺しにしてしまえばいい。
わたくしの美学として、無事本番行為を終えた人間の女性については必ず「ありがとう」と言ってから人間界につき返すようにしています。こうする事によって魔王に抱かれた女がわたくしの評判を高めてくれる効果を期待しての事です。毎日何人もの女に同じ事をやっていればそれなりに効果があるに違いありません。
さて、魔王となった私は毎日淫蕩に明け暮れるだけでなく、魔界の統治がすんなりいくように仕事の方もちゃんとやっております。
こちらの議会でも議場を荒らしただけで仕事をしたつもりになってしまう魔物はいますし、つまらない意地の張り合いや党同士の軋轢が原因で人間界を侵略する計画も進んでいません。結局もといた魔王もこれだけ無能な部下ばかりでは豪腕を振るって魔物の統治をするしかなかったのでしょう。
このまま放っておけばひとまず人間界の方も平和で済む気がいたします。それで平和になるのなら、もう良いではないかと思いました。
ですが、そのような希望もあっという間に消え去りました。
魔王になって数ヶ月が経った頃、とある国で勇者が現れたと聞きました。その男は何度殺しても蘇って来て、そしてより強くなって私の部下を打ち倒しているというのです。
とうとう本物の勇者が現れましたか。
遅いんだよ、バカ野郎と罵ってやりたいところではありましたが、勇者は有名な何度殺されても生き返ってくる能力を引っさげて、目下ものすごいスピードでこちらへ向かって来るとの事です。どうせ私のところへ着く頃には手のつけられない強さを手に入れているに決まっています。
逃げようか。
そんな事も思いましたが、それも無駄な事だなと諦めました。
勇者はどこまでも私を殺しに追ってくるでしょうし、魔王を倒す事でしか彼の存在意義は証明され得ないのです。いわばこれは典型的な善と悪。桃太郎と鬼の関係でしかありえないのです。
思えば元いた世界が厭になってここまでやって来ました。
死に物狂いで手に入れた安楽の日々も、結局はまやかしだったのだと証明されてしまい、私はひどく気分を害しています。
ですがそれもどうでもいい事です。
勇者が私を倒したら、私は彼に乗り移ってより強くなるだけの事です。
その時には魔物と人間が協調して、戦争も狂気も無い世界を創るよう頑張ってみようかなとも思っています。
結局、自分を取り巻くを変えられるのは自分だけのようです。
異世界にまでやって来て、私はやっとその事を学びました。
隣の芝は青く見える。
これは世界に軋轢を生む根本的な法則だったのかもしれません。
【了】
……いや、それではいくらなんでも説明を端折り過ぎですか。
もう想像はついているかもしれませんが、巨大タコの身体で魔王に闘いを挑んだわたくしは、見事に地獄の業火で焼かれました。
笑えるぐらいアッサリと焼き殺されたわたくしではございますが、いつもの如く自分を倒した敵の身体を乗っ取る能力を発揮して、まさかのラスボスを乗っ取るという暴挙に成功したのであります。
幸い魔王の肉体は大きなツノが二本ついている以外は人型のものでしたので、この身体なら人間の女とも自由にセックスが出来ます。
というわけで、わたくしは日々人間界にいる女性を移動呪文で呼び出してはセックスして送り返すという日々を繰り返しています。配下の魔物がどう思っているかは知りませんが、逆らう者は皆殺しにしてしまえばいい。
わたくしの美学として、無事本番行為を終えた人間の女性については必ず「ありがとう」と言ってから人間界につき返すようにしています。こうする事によって魔王に抱かれた女がわたくしの評判を高めてくれる効果を期待しての事です。毎日何人もの女に同じ事をやっていればそれなりに効果があるに違いありません。
さて、魔王となった私は毎日淫蕩に明け暮れるだけでなく、魔界の統治がすんなりいくように仕事の方もちゃんとやっております。
こちらの議会でも議場を荒らしただけで仕事をしたつもりになってしまう魔物はいますし、つまらない意地の張り合いや党同士の軋轢が原因で人間界を侵略する計画も進んでいません。結局もといた魔王もこれだけ無能な部下ばかりでは豪腕を振るって魔物の統治をするしかなかったのでしょう。
このまま放っておけばひとまず人間界の方も平和で済む気がいたします。それで平和になるのなら、もう良いではないかと思いました。
ですが、そのような希望もあっという間に消え去りました。
魔王になって数ヶ月が経った頃、とある国で勇者が現れたと聞きました。その男は何度殺しても蘇って来て、そしてより強くなって私の部下を打ち倒しているというのです。
とうとう本物の勇者が現れましたか。
遅いんだよ、バカ野郎と罵ってやりたいところではありましたが、勇者は有名な何度殺されても生き返ってくる能力を引っさげて、目下ものすごいスピードでこちらへ向かって来るとの事です。どうせ私のところへ着く頃には手のつけられない強さを手に入れているに決まっています。
逃げようか。
そんな事も思いましたが、それも無駄な事だなと諦めました。
勇者はどこまでも私を殺しに追ってくるでしょうし、魔王を倒す事でしか彼の存在意義は証明され得ないのです。いわばこれは典型的な善と悪。桃太郎と鬼の関係でしかありえないのです。
思えば元いた世界が厭になってここまでやって来ました。
死に物狂いで手に入れた安楽の日々も、結局はまやかしだったのだと証明されてしまい、私はひどく気分を害しています。
ですがそれもどうでもいい事です。
勇者が私を倒したら、私は彼に乗り移ってより強くなるだけの事です。
その時には魔物と人間が協調して、戦争も狂気も無い世界を創るよう頑張ってみようかなとも思っています。
結局、自分を取り巻くを変えられるのは自分だけのようです。
異世界にまでやって来て、私はやっとその事を学びました。
隣の芝は青く見える。
これは世界に軋轢を生む根本的な法則だったのかもしれません。
【了】
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