私はタコになりたい
- 2018/12/22
- 17:00
密漁で私財を増やしつつ、むしろわたくしが国王のキンタマを掴んでやろうかと考えていたあたりで、思わぬアクシデントが起こりました。
この日はいつも通りに快晴の大海をどんぶらこと流れている最中でございました。水に流れていると、前方にいる船がガツンと何かにつんのめったように動きを止め、あわやそのまま転覆しそうなくらいに前方へと傾いてしまいました。
私の知る限りこの辺に浅瀬があるはずはなく、かような光景がなぜ繰り広げられているのか不思議で仕方ありませんでした。
ですが、それだけでは終わりませんでした。
前を陣取っている船はふいに沈み始め、あちこちから荒くれ者達の悲鳴が聞こえました。
ヌヌヌイなんですかこれは?
そんな事を思っていると、私の乗っている船が突然揺れました。その衝撃はかなり強く、プールで飛び方を間違えて、固いコンクリに突っ込んだような衝撃でございました。
船体はギシギシと厭な音を立てており、ベキベキと折れた甲板から水が噴き出しはじめました。
このままのんびりしていては海の藻屑と消えてしまう。
そう思ったわたくしは、甲板まで出てきて、とりわけ厭な音のする船の側面から下を見下ろしました。
そしたらヌヌヌイでけえタコの触手がからみついているではありませんか。
なんという事でしょう。私達はクラーケンなる伝説のバケモノに遭遇した模様でございます。密漁ばかりしていたからバチが当たったのでしょうか?

理由はともあれ、こんなところで殺されている場合ではありません。コウドウ=カイというアイデンティティーを手に入れて、色々と手塩にかけて構築した密漁のビジネスモデルをこんなバケモノの気まぐれで破壊されつくされたのではたまりません。
私には夢があります(キング牧師風)。
密漁ビジネスでこしらえた金で、軍勢をこしらえて今の政権を転覆させるという夢が。
私には夢があります(キング牧師風)。
今の無能な王をさっさと打ち首にして、若く美しい娘達にはもれなくJKの制服を着せる法案を議会に通すという夢が。
私には夢があります(キング牧師風)。
魔王の事なんか忘れて、みんなが楽しく酒池肉林と生きていける世界を創りだすという夢が。
嗚呼、ですからこんなところで死ぬわけにはいきませんいきませんいきません。
わたくしは何としてでも、このでかいだけしか能の無いタコ野郎に勝つのだと。
私は船に置いてある巨大な銛を手に、船体へ巻きついた触手にグッサリと突き刺しました。野獣のような咆哮とともに、触手が激しく波打ちます。きっと効いているのでしょう。
勢い付いた私は、船体に巻きつく触手という触手に銛を突き刺しました。私の姿を見た仲間も鼓舞されたのか、手に手に持った武器で巨大タコの触手を蜂の巣にしていきます。
戦局が変わりゆくにつれて、逆にこいつを獲物として持ち帰ったら大層高い値段で売れるんじゃないかという考えさえ浮かんで、絶対に勝ってやるという思いが湧いてきました。
しつこい波状攻撃に痺れを切らしたのか、クラーケン本体が姿を現しました。
さあ、貴様をタコ焼きにして新しいビジネスを展開してやる。
そう思った時でした。
あっちから、そしてこっちから、ざっばざっばと何かすごく厭な予感のする音がしました。
なんでございますかと訊く前に、その音の主は姿を現し始めました。
「なんてこった」
厭な音の正体はクラーケンでした。ですがそれは今わたくしがタコ焼きにしてやろうとしている奴ではございません。
「ヌヌヌイ……」
ざっぱざっぱと小気味の良い音とともに、あっちこっちに目の前にいるクラーケンと同じやつが複数現れ始めました。
まあ、たしかに、誰もクラーケンが群れで行動しないなんて言っていませんでしたね。
目の前に大量のクラーケンを見た時、仲間達は絶望的な勝算を悟ってフリーズしていました。無数の触手は、船をギシギシと締め付けていきます。それは確実に私達の人生にピリオドを打つための序曲でした。
静寂は悲鳴に変わり、あちこちから断末魔の叫びが聞こえてきました。
目の前で巨大な魔物が猛威を振るう中、私は独り、「次はタコになるのかよ」とブルーな気持ちになっていました。
この日はいつも通りに快晴の大海をどんぶらこと流れている最中でございました。水に流れていると、前方にいる船がガツンと何かにつんのめったように動きを止め、あわやそのまま転覆しそうなくらいに前方へと傾いてしまいました。
私の知る限りこの辺に浅瀬があるはずはなく、かような光景がなぜ繰り広げられているのか不思議で仕方ありませんでした。
ですが、それだけでは終わりませんでした。
前を陣取っている船はふいに沈み始め、あちこちから荒くれ者達の悲鳴が聞こえました。
ヌヌヌイなんですかこれは?
そんな事を思っていると、私の乗っている船が突然揺れました。その衝撃はかなり強く、プールで飛び方を間違えて、固いコンクリに突っ込んだような衝撃でございました。
船体はギシギシと厭な音を立てており、ベキベキと折れた甲板から水が噴き出しはじめました。
このままのんびりしていては海の藻屑と消えてしまう。
そう思ったわたくしは、甲板まで出てきて、とりわけ厭な音のする船の側面から下を見下ろしました。
そしたらヌヌヌイでけえタコの触手がからみついているではありませんか。
なんという事でしょう。私達はクラーケンなる伝説のバケモノに遭遇した模様でございます。密漁ばかりしていたからバチが当たったのでしょうか?

理由はともあれ、こんなところで殺されている場合ではありません。コウドウ=カイというアイデンティティーを手に入れて、色々と手塩にかけて構築した密漁のビジネスモデルをこんなバケモノの気まぐれで破壊されつくされたのではたまりません。
私には夢があります(キング牧師風)。
密漁ビジネスでこしらえた金で、軍勢をこしらえて今の政権を転覆させるという夢が。
私には夢があります(キング牧師風)。
今の無能な王をさっさと打ち首にして、若く美しい娘達にはもれなくJKの制服を着せる法案を議会に通すという夢が。
私には夢があります(キング牧師風)。
魔王の事なんか忘れて、みんなが楽しく酒池肉林と生きていける世界を創りだすという夢が。
嗚呼、ですからこんなところで死ぬわけにはいきませんいきませんいきません。
わたくしは何としてでも、このでかいだけしか能の無いタコ野郎に勝つのだと。
私は船に置いてある巨大な銛を手に、船体へ巻きついた触手にグッサリと突き刺しました。野獣のような咆哮とともに、触手が激しく波打ちます。きっと効いているのでしょう。
勢い付いた私は、船体に巻きつく触手という触手に銛を突き刺しました。私の姿を見た仲間も鼓舞されたのか、手に手に持った武器で巨大タコの触手を蜂の巣にしていきます。
戦局が変わりゆくにつれて、逆にこいつを獲物として持ち帰ったら大層高い値段で売れるんじゃないかという考えさえ浮かんで、絶対に勝ってやるという思いが湧いてきました。
しつこい波状攻撃に痺れを切らしたのか、クラーケン本体が姿を現しました。
さあ、貴様をタコ焼きにして新しいビジネスを展開してやる。
そう思った時でした。
あっちから、そしてこっちから、ざっばざっばと何かすごく厭な予感のする音がしました。
なんでございますかと訊く前に、その音の主は姿を現し始めました。
「なんてこった」
厭な音の正体はクラーケンでした。ですがそれは今わたくしがタコ焼きにしてやろうとしている奴ではございません。
「ヌヌヌイ……」
ざっぱざっぱと小気味の良い音とともに、あっちこっちに目の前にいるクラーケンと同じやつが複数現れ始めました。
まあ、たしかに、誰もクラーケンが群れで行動しないなんて言っていませんでしたね。
目の前に大量のクラーケンを見た時、仲間達は絶望的な勝算を悟ってフリーズしていました。無数の触手は、船をギシギシと締め付けていきます。それは確実に私達の人生にピリオドを打つための序曲でした。
静寂は悲鳴に変わり、あちこちから断末魔の叫びが聞こえてきました。
目の前で巨大な魔物が猛威を振るう中、私は独り、「次はタコになるのかよ」とブルーな気持ちになっていました。
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