海賊版と呼ばれそうな男

　売春宿の放火からしばらく経ち、私は漁業でその名を轟かせておりました。もちろん、密漁でございます。

　最初にこの世界へとやって来た時、川で食べた魚の不味さに驚愕したものですが、という事は、裏を返せば旨い魚を獲ってくればいいビジネスになるに違いないという発想の転換をしましたところ、その予想はものの見事に的中いたしました。

　最初は小船を使ってウニの密猟をしておりましたが、それで小金を儲けているうちに漁業船に囲まれまして、「貴様のやっている事は領海侵犯だ」とか一般人の分際で海保みたいに生意気な口をきくものですから、船に乗り込んで乗組員を漏らさず撲殺いたしました。

　その際に「あれ？　この船使えるんじゃね？」と思ったわたくしは、私を囲った三艘を無償で手に入れ、そのまま自分の漁業船として使う事にいたしました。

　港に戻ってきたら世の中から阻害されているような札付きのワルばかりを集めまして、腕っ節の強い漁業団を立ち上げました。

　根性の入った奴らだからノルマは真面目にこなしていましたし、不漁の時は他の船を襲えばいい。たとえ死んでも身寄りの無い人がほとんどでしたから、仲間内で葬儀を行なったら水葬しても特に問題は起きません。色々と都合のよろしい乗組員でございました。

　いつかは魔王がどうとかこうとかそんな話がありましたが、一生続けられる仕事が手に入った以上もうどうでもいい事です。

　王からは「いつ魔王討伐に出る気だ」と何回も通達が来ておりましたが、ここからくる税金が惜しいのか、ある日を境に連絡は来なくなりました。私は正式に勇者ではなく漁師でいいという事になったのだと思います。

　ああ、ゆくゆくは麻薬の運び屋でも始めましょうか。この世界に来る前にパケをどうやって製造するか学んでおくべきでした。そうしたらもっと効率良く稼げたのに。

　まあいいです。贅沢を言ってもいられません。

　ここは手堅く商売を拡張させていこうかと思います。