場面転換の技術
- 2017/07/26
- 06:00
珍しく小説テクニックの話でもしますか。
どこぞで如月恭介氏の筆致が上がったみたいな話をしましたが、特に顕著だったのは場面の切り替えが丁寧になったところですかね。
雑な小説の場面転換って、どこでシーンが切り替わったのかが凄く分かりにくいのですね。こういう場面転換はチャンドラーが一番お手本になりそうなのですが、ちょっと簡単な例を出して比較してみましょう。
雑な例
どうやら事件の鍵はタツヤが握っているらしい。あいつと最後に会ったのはいつだったか、「俺はホモじゃない」と置き手紙を残してどこかに消えてしまった。一時は故郷に帰ったと聞いたが、錦を飾るとはいかず、九州地方に逃れたと聞いている。俺はタツヤを追うことにした。
夜の中洲に着いた。
彼がいるとすればここしかない。歓楽街を歩き回ってタツヤの痕跡を探す。
(例文ここまで)
上記の場面転換の印象はどうでしょうか?
文章そのものが陳腐とか主旨を無視した発言をする人は撃ち○しますよ。
そういう事ではなく、場面転換が分かりやすいかという視点で見てみましょう。
まあ、上記の場面転換も不足ではないですよ。
でも、どこで切り替わったのかを注意深く見ていないと、つまり「夜の中洲に着いた」の部分を飛ばし読みしていたなどの理由で早く読みすぎてしまうと、読者にとって「アレ?」ってなってしまうのですね。
それは読者が悪いって?
読者はワガママなものですよ。散々レビューで思い知らされたでしょう?
そこでこうします。
丁寧な例
どうやら事件の鍵はタツヤが握っているらしい。あいつと最後に会ったのはいつだったか、「俺はホモじゃない」と置き手紙を残してどこかに消えてしまった。一時は故郷に帰ったと聞いたが、錦を飾るとはいかず、九州地方に逃れたと聞いている。俺はタツヤを追うことにした。
夜の中洲に着いた。さすがに全国的に有名な歓楽街とあって、その艶やかな眩しさは東京に勝るとも劣らない。あちこちに並ぶ極彩色の看板――タツヤの件が無ければ、しばらく遊んでいきたいところだ。
彼がいるとすればここしかない。夜の街を歩き回って痕跡を探す。
(例文ここまで)
とまあこんな感じですかね。
後者の方が場面転換があったのが明白でしょう。
なぜでしょう?
答えは簡単で、後者の方が切り替わった場面の描写が丁寧だからですね。
つまり、切り替わりましたよーというのが描写を通じて読者に伝わるのです。
このあたりがちゃんと出来ているかどうかで作品がプロっぽいか素人っぽいか、印象が別れたりします。ちゃんと習得したい人はチャンドラーあたりを読んでパクるのが一番いいでしょう。
これを本能的に出来るレベルにまで練習して下さい。
そうすると、まるで画が見えてくるような文章が書けますよ。
どこぞで如月恭介氏の筆致が上がったみたいな話をしましたが、特に顕著だったのは場面の切り替えが丁寧になったところですかね。
雑な小説の場面転換って、どこでシーンが切り替わったのかが凄く分かりにくいのですね。こういう場面転換はチャンドラーが一番お手本になりそうなのですが、ちょっと簡単な例を出して比較してみましょう。
雑な例
どうやら事件の鍵はタツヤが握っているらしい。あいつと最後に会ったのはいつだったか、「俺はホモじゃない」と置き手紙を残してどこかに消えてしまった。一時は故郷に帰ったと聞いたが、錦を飾るとはいかず、九州地方に逃れたと聞いている。俺はタツヤを追うことにした。
夜の中洲に着いた。
彼がいるとすればここしかない。歓楽街を歩き回ってタツヤの痕跡を探す。
(例文ここまで)
上記の場面転換の印象はどうでしょうか?
文章そのものが陳腐とか主旨を無視した発言をする人は撃ち○しますよ。
そういう事ではなく、場面転換が分かりやすいかという視点で見てみましょう。
まあ、上記の場面転換も不足ではないですよ。
でも、どこで切り替わったのかを注意深く見ていないと、つまり「夜の中洲に着いた」の部分を飛ばし読みしていたなどの理由で早く読みすぎてしまうと、読者にとって「アレ?」ってなってしまうのですね。
それは読者が悪いって?
読者はワガママなものですよ。散々レビューで思い知らされたでしょう?
そこでこうします。
丁寧な例
どうやら事件の鍵はタツヤが握っているらしい。あいつと最後に会ったのはいつだったか、「俺はホモじゃない」と置き手紙を残してどこかに消えてしまった。一時は故郷に帰ったと聞いたが、錦を飾るとはいかず、九州地方に逃れたと聞いている。俺はタツヤを追うことにした。
夜の中洲に着いた。さすがに全国的に有名な歓楽街とあって、その艶やかな眩しさは東京に勝るとも劣らない。あちこちに並ぶ極彩色の看板――タツヤの件が無ければ、しばらく遊んでいきたいところだ。
彼がいるとすればここしかない。夜の街を歩き回って痕跡を探す。
(例文ここまで)
とまあこんな感じですかね。
後者の方が場面転換があったのが明白でしょう。
なぜでしょう?
答えは簡単で、後者の方が切り替わった場面の描写が丁寧だからですね。
つまり、切り替わりましたよーというのが描写を通じて読者に伝わるのです。
このあたりがちゃんと出来ているかどうかで作品がプロっぽいか素人っぽいか、印象が別れたりします。ちゃんと習得したい人はチャンドラーあたりを読んでパクるのが一番いいでしょう。
これを本能的に出来るレベルにまで練習して下さい。
そうすると、まるで画が見えてくるような文章が書けますよ。
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